日本で2030年以降に原子力発電ができなくなる「2030年問題」が見えてきた
■六ケ所村の核燃料再処理工場を動かせない裏事情
なぜこのような状況が起こってしまうのだろうか。高レベル核廃棄物の最終処分地が決まっていない原発は以前から「トイレなきマンション」と呼ばれていた。しかし、この糞詰まりの理由は最終処分地の問題ではなく、核燃料再処理工場(青森県六ヶ所村)の稼働が大幅に遅れていることが原因だ。 再処理工場を建設している日本原燃は今年9月に完成させると公言してきたが、突如、8月29日に完成目標を2年ほど延期すると発表した。再処理工場はもともと1997年に完成予定だった。このような完成延期は今回で実に27回目で、当初予定より27年間も完成が先送りされ続けているのだ。 今回の延期理由は東日本大震災後につくられた新規制基準への審査対応に時間がかかるとしているが、完成予定の直前に突如2年も延期するという発表に不可解さが拭えない。 このような苦しまみれの発表をする裏には、核燃料サイクルの破綻によるプルトニウムの蓄積問題が関係している。再処理工場を動かしてしまうと、使用済燃料から毎年8トンのプルトニウムが抽出される。
■プルトニウムを使う予定だった「もんじゅ」も頓挫
当初、核燃料サイクルとして高速増殖炉によりこれを利用する予定だったが、もんじゅが頓挫した今、プルトニウムはMOX燃料として通常の原発で使う、いわゆる「プルサーマル」で消費するしかない。
■日米原子力協定で日本が持てるプルトニウムは47トンまで
しかし、原発1基で消費できるプルトニウムは年間たった0.5トン程度しかなく、再処理工場から出てくる量を消化するには16基程度でのプルサーマル運転が必要だが、日本での実績は関西電力高浜発電所でしかない。 つまり、再処理工場が完成して稼働し始めると、プルトニウムの消費が全く追いつかず、どんどん蓄積し始めることになる。日本はすでにこれまで海外で再処理された47トンのプルトニウムを保有しており、核爆弾に転用できるプルトニウムの保有は国際的に厳しい目で監視されており、これ以上増やすことはできない。 さらに、核保有国でない日本が世界で唯一、再処理事業を行うことができるのは、1968年に締結された日米原子力協定によって、「核燃料サイクルを前提としたプルトニウム抽出を許可」されているからである。