悲しい荒廃の歴史をぼっちで生き抜いた! 中倉山の孤高のブナに会いに行く「絶景トレイル」を歩く
煙害による山肌破壊の生き証人の孤高のブナ
山頂から見下ろした10mほど降ったコルに求めていた出会いはありました。「孤高のブナ」です。冒頭に記した足尾銅山採掘事業等による煙害から生き延びた一木は、周囲は鮮やかな緑の草地が広がり、登山者が周囲を踏み荒さないようにロープで囲われています。登山者が根元の靴で踏み荒らさないでほしい、という山を管理する方達の思いからなのでしょうか。 この一人ぼっちのブナを境に北面側、つまり日光中禅寺湖側と南側の足尾~渡良瀬側とで植生の違いが大きく異なることを確認することができます。北面側は採掘による煙害で草木は枯れ、岩地むき出しの禿げ山と化しました。反対の南側は緑鮮やかな草木が広がり、樹林帯を形成しています。 冒頭にも記したように多くの関係者の努力と重ねてきた再生の時間は、徐々に北面側にも緑を回復しているようです。ちなみに日本の山岳小説の大家・新田次郎氏作品群に「ある町の高い煙突」という小説があります。舞台はこの足尾ではなく隣県の茨城県の現日立市ですが、ほんの少しだけですが足尾の件にも筆は触れています。煙害による山の荒れとそこに住む里山の人々の苦労を語っていますので、機会があれば一読を。 「孤高のブナ」はインスタ映えの高さで人気ですが、数十年後レベルで、「孤高のブナと仲間たち」と呼ばれるように「ぼっち」でなくなることを願い、下山します。
ソトラバ編集部