悲しい荒廃の歴史をぼっちで生き抜いた! 中倉山の孤高のブナに会いに行く「絶景トレイル」を歩く
登山好きの間では栃木の山と聞けば日光は男体山であり、那須の那須岳、そして群馬県との県境にある日光白根山がメジャーかと思います。いずれも日本百名山に名を連ねる名峰ですが、栃木県内にはもう一座、百名山に名を連ねる皇海山(すかいさん)があります。皇海山は足尾山地の主峰ですが、最近この足尾山地の低山が登山ファンの間で人気です。山頂から見えるブナの一木が絶景を作り上げています。 【写真】孤高のブナを目指して歩く中倉山登山のルートを見る(全13枚)
渡良瀬川源流域の長閑さと真逆の環境汚染の象徴
その低山は中倉山といいます。標高1530m。栃木県日光市南側の足尾地区にあります。足尾の名は中学・高校の社会科や日本史の教科書で見かけた「足尾銅山」の足尾です。足尾銅山の採掘による乱伐採と排出された亜硫酸ガスなどによる鉱毒問題で、日本史上に悲しい環境問題を残した地区です。今でこそ、多くの人々の努力により森林の再生も進み、山本来の姿を取り戻す努力が続けられ、悲しい歴史の爪痕も薄れようかというほどに山肌の緑も活気付いてきたようです。 登山口駐車場となる銅親水公園は、足尾ダムを擁する足尾環境学習センターが置かれた地域のシンボル施設です。約20台程度の駐車スペースは無料。クルマを駐め置いて、渡良瀬川源流の松木川沿いの林道を進みます。2度清流にかかる橋を渡り、舗装された林道を西に進むこと約1時間で中倉山登山口にとりつきます。
山頂稜線は日本アルプスを彷彿とさせる絶景
中倉山登山道は取り付き早々から急登。山頂手前までほぼ樹林に覆われ木陰の涼やかな山行ではありますが、その分登山道上での眺望は乏しいのが残念なところです。標高1300mあたりから尾根に乗り、100mほど上った先にやっと眺望が現れます。足尾山地の主峰・皇海山らしき山頂が見えます。山頂稜線はもう少しです。 ひと踏ん張りして山頂稜線に飛び出るや絶景が待ち構えています。北東方面には日光連山の主峰・男体山の雄々しい山容がドカンと居座り、その左手北北東に倅の太郎山が恥ずかしげに顔を覗かせ、逆の右手東寄りには錦秋の中禅寺湖の眺望が素敵な半月山~社山が目前に。日光連山の絶景をしばし堪能できます。 そしてそこから先に進む山頂稜線の素晴らしさ。青空の下に広がるは日本アルプスを彷彿とさせるようなダイナミックな稜線を見ることができます。そして山頂。ケルンが崩れたかのようではありますが、コンパクトな手作りの木碑が低山らしくもあります。この日本アルプス風な稜線は、その先に居並ぶ沢入山へと続きます。