追跡調査から見えた、子どもの不登校が「保護者の抑うつ」に及ぼした影響
不登校の児童数は年々増加し続けています。文部科学省の発表では、令和4年度の小中学校における不登校児童生徒数は過去最多の29万9000人に達しました。不登校はもはやだれにとっても他人事ではない問題です。 【漫画】「学校行くのやめよう!」不登校児の親が決心した理由 今回は、2月21日に開催された認定NPO法人3keys(スリーキーズ)主催の第25回 Child Issue Seminar「不登校追跡調査から見えたもの~その時に子どもたちは何を思ったのか」において、社会福祉士・研究者として不登校支援に携わる福岡県立大学の原田直樹さんのお話をご紹介します。
三世帯同居が子どもに与える影響
福岡県立大学内に設置された「不登校・ひきこもりサポートセンター」で追跡調査を実施しました。過去にセンターを利用した保護者と不登校の子どもたちで、調査時点で18歳以上になっている方を対象として行いました。 保護者調査が246名、子ども調査115名を抽出して調査対象としたのですが、保護者調査のアンケート配布総数246で宛先不明が14.2%。子ども調査は、115名に配布して宛先不明が16.5%。回収率も3割と非常に少ない結果となりました。 私も仕事柄いろんな調査を実施しますが、これだけ宛先不明で調査票が戻ってきたのは初めての経験でした。宛先の住所は昔のものではなく、早ければ1年前、長くても6年前の住所に送っても約16%が戻ってきたのです。これは、居住の不安定さを示しています。 そして、1人親世帯ということは経済的な困窮に繋がっています。国の調査では、1人親の世帯の9割が母子世帯です。 母子世帯の年間収入を見てみると、実は年収200万円以下が47.4%で、約半分です。子どもの数は平均1.5人と言われていますので、子ども1人か2人を抱えて、お母さんの収入で親子3人が食べていくのは相当きついと思います。 食費、光熱費、家賃、全て母親の収入から払わなければいけないことを考えると、やはり子どもに相当の我慢を強いてしまいます。こういった状況が、不登校の子どもがいる世帯が抱えている課題と言えそうです。 また、3世代同居は27.3%(19.7%+7.6%)ととても多い。時折、この3世代同居が家庭内ストレスの原因となることがあります。 不登校の相談に来るのはお母さんが非常に多いのですが、子どもが不登校になると、家庭の中でおじいちゃん、おばあちゃんから「何があったの、なぜあの子は学校に行けないの?」とお母さんが聞かれるわけです。お母さんは「そんなの私が知りたいよ」と思ってしまう。 おじいちゃん、おばあちゃんはお孫さんのことを心配して発した言葉なのかもしれませんが、中にはお母さんに対して、「うちの家系には学校に行かなかった子なんていなかったよ」とボソッと言う。これがどれだけ母親の心をえぐるか。お母さんは深く傷つくわけです。