追跡調査から見えた、子どもの不登校が「保護者の抑うつ」に及ぼした影響
不登校が保護者の抑うつに影響する
保護者の抑うつについての調査を行ったところ、不登校が解消した時よりも、子どもが学校に行けなかった時の方が保護者の抑うつが非常に強い。 不登校だった過去から、解消した現在にかけて「抑うつあり」が「抑うつなし」へと改善したケースが多く、逆に「抑うつなし」が「抑うつあり」に変わった人は1人もいませんでした。 つまり、子どもの不登校が保護者の抑うつに影響を及ぼしたことが考えられます。親の抑うつ状態が子どもの不登校に影響しているとよく言われますが、不登校が抑うつに影響している可能性がでてきました。 我が子が不登校になると、保護者はとても大きなショック受けます。「なんでうちの子が...」と原因探しをします。しかし、得てして自分の周りで原因を見つけるのは難しく、結局原因を先生、友達、部活動に求めてしまうのです。これで学校と関係がこじれることもあります。
さらに、決定的な原因が見つからないと、無力感や焦り、自分の子育てが悪かったのかと思い始めます。そこから抑うつ・イライラといった心理状態に移行していくのです。 しかし、不登校の原因を保護者のメンタルヘルスの問題にされてしまうと、助かるものも助かりません。 保護者のメンタルヘルスが不登校に影響しているというよりは、不登校が保護者のメンタルヘルスに影響を及ぼしている可能性の方が大きいわけなのです。支援者はこういった心理状態の移行過程があるということを知っていただきたいです。 子ども側も同じです。特に学校に行こうか行くまいか、苦しんでいる子どもは、退行現象という赤ちゃんがえりのような状態を起こすことがあります。学校へたまたま行くことができて帰宅すると、荒れることがあるのです。 私が見たケースでは、高校生の女の子が久しぶりに学校に行って帰ってきた。弟と妹がいないのを確認して、お母さんに「抱っこして」と言うんです。お母さんは抱きしめてあげた。それはその子の精一杯のメッセージだったんだと思います。 しかし、その場面だけを見て「そんなふうに甘やかして過保護だから、この子は不登校になった!」なんて言われると保護者も子どもも逃げ場がありません。 一部分だけを切り取って評価する、ということは支援者はやめなければならない。こういった調査を見ても、不登校の問題においては保護者も支援対象であると非常に強く思うのです。
福岡県立大学看護学部准教授