混戦模様の有馬記念…2020年の競馬界は”女傑の時代”だったが混乱の1年を締めくくるのは牝馬か牡馬か
今年52勝で現在リーディングトレーナートップを走る矢作芳人調教師が送り出す2枠4番のラヴズオンリーユー(牝4)も上昇気配だ。エリザベス女王杯で3着。このレースからの直行組の有馬との相性は悪いが、矢作調教師は「確信しました。やっと戻った。厩舎を出るときの身のこなしが柔らかくなった。リスグラシューで勝っているので連覇できるのはうちの厩舎だけ。一発狙う」と鼻息が荒かった。 ただ、有馬の過去10年で牝馬が勝ったのは2頭だけ。中山競馬場独特の外回りの3コーナー手前からスタートし、コーナーが6つ、坂が2つもある特異なコース形態と、芝のコンディションが影響していると見られる。牝馬にとっては厳しい条件になっているのは間違いない。牝馬は夏競馬――の鉄則もある。 それでも円熟期を迎えた5歳牝馬は別だろう。昨年の優勝馬のリスグラシュー、2014年のジェンティルドンナは、ともにここがラストランだった。余力を残してのグランプリ参戦なら十分太刀打ちできると言うことなのかもしれない。 今年その条件に当てはまるのが4枠7番のラッキーライラック。デビューから3連勝で阪神ジュベナイルフィリーズを制覇し、2歳女王に。牝馬3冠レースではシンザン記念を勝ち、すい星のごとく現れたアーモンドアイの後塵を拝したが、4歳になって復活し、エリザベス女王杯を制覇。5歳を迎えた今年は牡馬相手の大阪杯を勝ち、エリザベス女王杯では大外枠を克服し連覇を成し遂げ、4個目のG1タイトルをつかんだ。しかも、クロノジェネシスには2勝1敗と勝ち越している。 状態もここがラストランとなるのがもったいなく思えるほど絶好調だ。1週前には栗東CWコースで6ハロン70秒台の好時計。併走パートナーに並び駆ける脚は圧巻だった。最終調整は予定通り初コンビとなる福永祐一騎手が騎乗。「同世代にアーモンドアイがいましたが、この馬も名牝と呼ばれる存在。ダイナミックで牝馬らしからぬ走りをする。1周目のスタートから正面スタンドまでをリズム良く走らせて、有終の美を飾らせてあげたい」と好感触をつかんでいる。