生成AIがアメリカ大統領選を混乱させる? 「バイデン氏やトランプ氏の偽画像も簡単に作れる」と専門家、すでにSNSで拡散も
選挙を目的とした偽画像は既にSNS上に拡散し始めている。英BBCは3月、トランプ氏の支持者らがAIを使って、アフリカ系アメリカ人がトランプ氏を称賛しているような偽画像を多数生成し、拡散していると報じた。トランプ氏が黒人女性たちに囲まれてほほえんでいる偽画像などが確認されており、BBCは「トランプ氏が黒人コミュニティーで人気があると見せかける戦略」と指摘する専門家の声を伝えた。 ▽対策の柱「電子透かし」は簡単に無効化 企業側も手をこまねいているわけではい。グーグルやオープンAI、MS、メタ(旧フェイスブック)、X(旧ツイッター)などからなるAI大手20社は2月、今年行われる選挙で生成AIの悪用を防ぐために協力して取り組むことを定めた協定に署名した。 オープンAIは1月に選挙への自社技術の使用を禁止する方針を示したほか、グーグルは5月の開発者会議で偽画像の拡散防止のための新技術を紹介した。MSの担当者は「候補者がディープフェイク(動画や音声を合成したコンテンツ)を報告するためのウェブサイトを立ち上げるなど対策を講じている」と話す。
しかし、現状の対策では偽情報の生成と拡散は防げないとの見方が大勢だ。例えばAI20社による合意で生成AI画像を識別する方法として言及している「電子透かし」は、容易に無効化できることが明らかになっている。 「電子透かし」はデジタルコンテンツの生成元や変更履歴についての情報を埋め込む技術で、改ざんや削除ができないことから情報の信頼性を確認するために使われている。2021年にアドビ、インテル、MSなどが中心となって作られた「C2PA」が代表的な規格で今年に入ってオープンAI、グーグルも参加した。 電子透かし入りの画像は、チェックサイトにアップロードすると生成AIで作成されたことが表示される。しかし、画像のスクリーンショットを使うことで何も表示されなくなる。この手法は米電気電子技術者協会(IEEE)が発行したリポートなどで指摘されており、オープンAIも「電子透かしは特効薬ではない」と認める。