【オートレース】憧れの先輩の助言でエンジン仕上げた長田稚也「すごくいい状態。本当に楽しみ」~川口SG日本選手権
敬愛してやまない憧れの先輩に、心を決めて土壇場ですがって、そして大仕事へと結実させた。 準決勝戦12R。センターの4枠から長田稚也がここ一番でとびきりの痛快ダッシュを決めた。そしてすぐさま先頭に躍り出ると、8周回を疾走して大物どころを完全完封した。 普段の長田は、あくまで鋭いさばき勝負。スタートに依存するタイプではなく、序盤は後ろに控えるケースが多いが、ここ一番で切ってみせた。 「出て先頭に届いた時は、切ったあ~!とマジでうれしかったです。手前から持っていってくれるし、エンジンは最高でした。でも、それも荒尾聡さんのお陰なんですけれどね…」 予選4ラウンドは3、1、3、7着でまとめた。「エンジンのベースはすごくいい!」と繰り返し口にしていた。「でも、あと少し。もう少しで完璧に仕上がるところから、なかなか上を出せなくて。もう、ここで心を決めて、覚悟を決めて荒尾さんを頼りました」 長田は常に荒尾を手本としている。「もう、ずっと荒尾さんの乗り方を見て、研究して、アドバイスをもらっています」と話すが、実は整備の助言は賜っていなかったという。「やっぱり、そこは整備グループが違いますし、自分に教えてくれる方がいますので、荒尾さんに聞きにいくのは違うのかなと思っていました。そこの線引きは大切ですからね。でも、どうしてもここで結果を出したかったし、荒尾さんのところへ行きました」 頼られた荒尾もびっくりしていた。「急にマサヤがやって来たので、普段はそんなにエンジンの話はしていませんでしたが、自分ならこうするかなみたいなことは伝えました」 そして、長田はその金言をすべて生かし切った。「乗り方は何度も聞きましたが、整備のことはそこまで深く聞いたことはありませんでした。でも、今回は自分の状態を伝えて、質問してみました。すると荒尾さんは本当に詳しく教えてくれて、エンジンは最高の状態になりました!」 このレースで会心のダッシュをズバッと決めることができたのも、実は荒尾の一言だった。「自分、去年のスーパースター王座決定戦に初めて出場できたんですが、あの当時のスタート力では全然通用しなくて…。結果を出すことはできませんでした。でも、大会が終わった後、荒尾さんが『これで何が足りないのかがわかっただろ?』と声を掛けてくれました。そこからですね。自分なりにこの一年を掛けてスタートの改善にも取り組んできました。その成果が今回のトップスタートにつながったと思っています」 まさにアラオチルドレン。最良の教え子がアドバイスを生かして、次々と成果を挙げていることを最高の先生はすごく喜んでいた。「そこがマサヤのすごいところなんです。今回、スタートを決めて一年間の努力を証明するんだからね!マサヤとキョースケ(中村杏亮)が出てきて、また飯塚が活気づいて、それがすごくうれしいよね。いい後継が出てきたし、自分もそろそろ辞めることができますかね(笑い)」 さあ、初となるSGメダル獲得へ。筑豊の24歳が全力チャレンジする。「去年の大会で自分は初めてSG優勝戦(4着)に乗ることができました。そして、スーパースターにも行けました。去年の準決勝戦は正直、展開が僕に向いてくれました。でも、今年は違う。自分の力でスタートを切って乗ることができました!すごくいい状態で走れると思いますし、本当に楽しみです!」 荒尾も楽しみにしていた。「キョースケとマサヤと一緒に走ることができて、それがうれしいよね!」 背中を追い続ける憧れの教科書を超えた先に、長田が渇望するでっかい勲章は待っている。(淡路 哲雄)
報知新聞社