海外出張を増やした理由と、研究者の仕事の"本分"とは?【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
連載【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】第81話 大学時代までは、内向的で、人見知りで、友達を作るのは得意じゃなかった......。そんな筆者が、時を経て、2023年には見知らぬ人に会うために海外出張を増やしまくった。コロナ禍にはできなかった海外の研究者との対面交流で得られたものとは? * * * ■海外出張を増やした理由 自分で計画したことではあるが、それにしても2023年は、「メールで連絡は取ってるけど、対面で会ったことがない人のところへの突撃訪問ツアー」の機会が多かった。この連載コラムで取りあげたものを振り返るだけでも、ロッテルダムのハーグマンス教授(40話)にはじまり、プラハのイリ(40話)、ソウルのナム(50話)、キトのパウル(59話)、チョンジュのヘイクォン(68話)、そして、香港のトミーとヒン(76話)。機会が多すぎてそれが常習的になり、「知らない外国人のところに訪問し、研究の話をし、一緒に食事をしながら共同研究の方向性を模索すること」が主たる仕事になっている感じすらある。 43話でも少し触れたが、歳をとると、いろいろと物事の捉え方や体質、性格が変わる。 この連載コラムでも何度か紹介したことがあるが、大学時代までの私は、典型的な東北人気質で、内向的な性格だった。人見知りだったし、友達を作るのが不得手だった(友達作りについては、今でも得意だとはまったく思っていないが)。それがこんなことになるのだから、人生何が起こるかわからない(ちなみにその経緯は、63話で紹介しています)。 2023年は、海外出張を意図的に増やしたところがあった。その理由はふたつある。ひとつ目は単純に、コロナ禍の真っ只中は海外に行けなかったので、その揺り戻しというか、行けなかった分だけ行けるうちに、というのがひとつ。 そしてふたつ目は、コロナ禍の中での研究成果、つまり、G2P-Japanの研究成果を対外的にアピールすることによって、日本のウイルス研究のプレゼンスを高めること、あるいはそれを売り込むことによって、国際的な共同研究のネットワークを広げること、にあった。 ■研究者の仕事の本分 私は、研究者の仕事の本分は、「論文を書くこと」であると思っている。 「アカデミア(大学業界)」の主たる仕事は、「教育」と「研究」のふたつである。私が所属する東京大学医科学研究所は、「附属研究所(附属研)」というものに分類される。附属研に所属する大学教員が「教育」に割く必要のあるエフォートは、学部や研究科に所属する教員のそれよりも少ないことが多い。つまり、私の大学教員としての主たる役割・活動は「研究」であり、「実験・研究し、その成果を論文にまとめること」にある。 ほかにも、研究費を獲得するとか、学生を指導するとか、やらなければならないことはいくつかあるが、これらも基本的には、「論文を書くこと」を最終的なゴールとした活動であると考えている。