老舗猫カフェが“老猫見守り場”に転身 あらためて問うペットの命の重さ
久芳さんと一緒に猫たちを見守っていきたいという客は残った。海外からの言葉の通じない客でも状況を理解し、老猫を温かく見守ってくれていることに久芳さんは感動を覚えたという。猫カフェではない「ねんねこ家」に、真の猫好きだけが残ったのだ。 「ミクロに次いでマ~ちゃん(マサヒロ)が亡くなったことも、かなり大きかったです。ああ、猫達も年を取ったし、私も……残りの人生は猫達との時間を優先させたいと思ったんです。店として異例の告知でしたが、本当に猫たちを愛してくれる人達が来てくれる場所になって、逆にこれでよかったと思っています」 見守りカフェとしての役目を終えた後には、原点回帰で世界中から谷中と猫とアートを愛する人達が集うようなアート空間に戻そうと久芳さんは考えているそう。
命を預かるということ 問題もある保護猫カフェの現状
最近は猫カフェと一口にいっても随分変わってきている。行き場のなかった猫たちの譲渡も兼ねた保護猫カフェも増えた。しかし、どれだけの店が猫たちの行く末までを考えて運営しているのか、疑問に思うことがある。 高級品種や子猫ばかりを取りそろえた猫カフェは、その猫たちが年老いたとき、どう対処するのだろうか。保護猫カフェで譲渡されずに残ってしまった猫が年老いたとき、どうするのか。 数年前、東京都内の猫カフェが閉店した際、猫の処分に困って保健所に飼い猫として持ち込もうとしたケースがあった。 今年6月には、鹿児島県にある猫カフェの経営者が、店内に猫を置き去りにしたまま行方不明になるという事件が発生。発見当時、13匹の猫はかろうじて生き残っていたが、4匹はすでに息絶えていたという。 鹿児島県をはじめ、猫カフェの動物取扱責任者に自治体主催の研修会の受講を義務付けるなどの対策をとっている自治体もあるが、拘束力はない。経営破綻などによる飼育放棄を防ぐ手立ては実質的にはないのが現状だ。国や自治体、第三者機関によるチェック機能がないまま、責任者のモラル頼みになっている。