「楽に受験できる」「実績やPR重視」は本当か? 噂だらけ「総合型入試と探究」理想と現実のズレ 来年に向け確認を
ルールを整理してもなかなかイメージが湧かない「総合型選抜」。なぜそうなるのか。SNSなどでは、出所がよくわからない選考基準やごく個人的な受験経験が基となった「攻略方法」が読者に信頼されて拡散されている。よく聞く話は、以下のようなものだ。 【画像】「とにかく実績を稼げ!」「オープンキャンパスでアピールすべし!」総合入試の“噂”の数々 言わば「都市伝説」があちらこちらに存在するのだ。「専門塾」と呼ばれるものの中にも「大学教員が読むのだから高尚な言葉遣いによる記述が必要だ」と頓珍漢(とんちんかん)なアドバイスをするところもあると聞く。将来の進路に関わる「受験」情報としてはかなり危うい状況だ。
■「実績稼ぎ」の競争になっていないか? さらに高校の教員にも、コンテストの入賞や論文発表を目指す“勘違い”が横行している。選抜試験では本来、コンテストの入賞経験をどう今後に生かすかが問われるのであって、結果ありきではない。 中堅校と位置付けられる高校が一般選抜ではなく、総合型選抜にフォーカスして合格実績をあげようと探究に力を入れるようになった。当初はこれらの「探究に舵を切った」と言われる中堅校が探究活動のコンテストにおける主力であった。
だが2022年4月から高校では新しい学習指導要領によって「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変わった。高校での「探究学習」が浸透するにつれ、伝統的な進学校がコンテストに参加し始め、賞を目指すようになっている。 こうしたコンテストでは発表よりも審査員との「受け答え」が重視され、そこでは「基礎教養」が問われる。そのため基礎基本をしっかりと整え、そのうえで探究学習をすることが求められる。 それに「探究」は学び方である。ゆえに「総合的な探究の時間」だけで展開するものではなく、教科の授業でも「探究」は可能であるし、現に「日本史探究」「世界史探究」「古典探究」のように科目名に「探究」が入っている。
教科の授業も演習問題をたくさん解くことに終始せず、1つのテーマをじっくりと「探究」することに重点を置きたい。なにしろ、もう一般選抜で入学する受験生は半分もいないのだから。 「探究に舵を切った」学校では、果たして教科での探究は充実しているだろうか。このあたりができていないと、探究学習をともなわない「探究活動」に終始することになり、薄っぺらな活動で終わってしまう。当然、コンテストでは評価されない。 私は「全国高校生マイプロジェクトアワード」や「ベネッセSTEAMフェスタ」などで評価者を務めた経験があるが、そこから言えることは、ここでも「学力の三要素」やリフレクション、論理的思考、経験の活用が重要であり、探究学習をともなった活動であるかといった観点で評価している、ということだ。