5歳の兄と3歳の弟がトイプードルを取り合った結果、死なせてしまい…「かける言葉も見つからない」と自らを責める両親に住職が伝えたこととは
◆生まれてきた意味は何か まず、このご家族に伝えなければならないことは、「『子どもたちが抱っこしなければ、この子は亡くならなかった』と思うのは間違いだ」ということです。 これは、あくまで仏教上の考え方で、また少し厳しい表現になりますが、そのワンちゃん自身がそれだけの生きる力がなかったということなのです。 このことを、まず、お父さん、お母さんに理解していただきます。 ご両親も、犬の生命をなくした不注意を後悔するとともに「こんな幼い子どもたちに犬を渡した自分たちが悪い」とご自身を責めていらっしゃったからです。 「生きる」というのは、「生かされている」ということ。 「いまできるのは、このワンちゃん自身が生まれてきた意味は何か、よく考えること」という事実を丁寧にお伝えしていきます。
◆時間をかけて お子さんたちにはこう言います。 「かわいいワンちゃんが亡くなって、悲しいよね、つらいよね」 お子さんたちはただただ泣いています。 「でも、ワンちゃんは悲しんでいる2人を見て、どう思うかな。『僕がこの世に犬として生まれてきて、そのせいで2人が泣いている。こんなに悲しませているなら、生まれてこなければよかった』と思っているかもしれない」 男の子2人は少し泣きやんで、びっくりした顔をします。 「今は亡くなってつらいっていうことばかり考えているかもしれないけれど、この子が来てくれたときはどう思った? うれしかったでしょ」 「うん」と2人。 「抱っこしたときもうれしかったよね。それだけでもワンちゃんは喜びを与えてくれたんだよ。じゃあ、今、君たち2人はお父さんやお母さん、まわりの人たちに喜んでもらえるようなことができているかな」 今、悲しんで泣きじゃくっているわが子の姿を見ているご両親は、もっと苦しいし、悲しいし、代わってやることもできない。どうしてあげることもできない。お父さん、お母さんも、とても悲しいのです。 「でも、本当にいちばん悲しくて苦しいのは誰だと思う? お父さん、お母さんかな?それとも君たちかな? そうじゃないよね。いちばん悲しくてつらいのは、ワンちゃんだよね」 ここまでゆっくりお話しすると、子どもたちも少し落ち着いてきます。 時間をかけてお話をしますが、現実的には、ワンちゃんをなるべく早く火葬しなければなりません。 ワンちゃんを火葬することの意味を、どんなに幼い子どもであっても理解しなければ、悲しいだけの思い出になってしまいます。 このままではワンちゃんも少しずつ腐っていってしまうこと、だからきれいな光で包んであげて、美しい姿に変えてあげようと伝えて、火葬をするのです。 お骨を拾うときに、ワンちゃんが感謝していることを喉仏(のどぼとけ)の骨を見せながら伝えます。喉仏は、まるで仏様がお衣を着て合掌している姿をしているからです。
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