「最高の相手でした」2回戦敗退も…札幌大谷CB大石蓮斗の表情はなぜ充実感に満ちていた?「北海道では経験できない」【選手権】
プレミアリーグ王者相手に自由を与えず
[高校選手権・2回戦]大津(熊本)2-1 札幌大谷(北海道)/12月31日/県立柏の葉公園総合競技場 【動画】選手権2回戦 札幌大谷vs大津ハイライト! 185センチのサイズを生かした空中戦、1対1の強さ、背後へのボールに対するスピードと持てる能力はフルに発揮した。 札幌大谷の2年生CB大石蓮斗は2024年11月、U-16日本代表候補に選ばれるなど、今年の注目株のひとり。1回戦の寒川戦では、空中戦でほぼ負けなしのプレーを見せるなど、守備能力の高さを示しただけではなく、1-1で突入したPK戦では1分間の間合いを取ってから蹴って成功させ注目を集めた。 そして2回戦の相手は高円宮杯プレミアリーグ王者の大津だ。 「プレミアWEST得点王のフォワード山下景司選手、190センチのセンターバック五嶋夏生選手、U-17日本代表のセンターバック村上慶選手、183センチの兼松将選手、プロ内定の嶋本悠大選手と、もうキーマンを挙げたらキリがない相手に真っ向から挑みたいし、自分がどれだけできるのかをしっかりと感じたい。大津が強いのはもう分かっていますが、楽しみで仕方がないというか、自分の真価が試される試合だと思うし、本気で勝ちに行きたい」 優勝候補筆頭を相手に臆するどころか、試合を心待ちにしていた大石は、1回戦と変わらないハイパフォーマンスを見せた。 空中戦で激しいバトルを繰り広げると、山下が得意とするマークを剥がすオフ・ザ・ボールの動きにもきっちりと対応。ボールが入ると鋭い寄せを見せて自由を与えなかった。 それでも大津の攻撃は強烈で、山下と兼松に自由を与えなくても、2列目以降が次々と湧き出して来て、シュートまで持ち込まれることもあった。ただGK高路地琉葦のビッグセーブにも助けられて前半はスコアレスで折り返した。 後半は前半よりも大石を中心に守備がうまく機能をしていた。しかし、それでも大津は強かった。 51分に左CKを嶋本に直接狙われて先制点を奪われると、60分には右サイドからのクロスに大石は足を伸ばすが届かず、背後のスペースに飛び込んでいた嶋本に追加点を決められた。だが、ここで崩れなかった。GK高路地のPKセーブもあって勢いを取り戻すと、後半アディショナルタイムに途中出場のMF中村哲爾が1点を返した。 1-2で敗れ2回戦敗退となったが、大石にとってこの試合はただの1試合ではなく、とてつもなく大きな財産となった。 「強かったです。山下選手は背負ってきたり、クロスの動き出しだったり、本当に上手かったです。山下選手だけではなく、大津の選手全員のプレー速度も本当に早かった。クロスが来ると思ったらミドルが来て、ミドルが来るかなと思ったら裏に来る。サイドからの攻撃もクロスだけじゃなくて、隙があれば僕とサイドバックの間のポケットを使ってくるなど、攻撃のバリエーションが多くて、これは北海道では経験できない、間違いなく日本一のチームでした」 大津の強さに衝撃を受けながらも、確かな手応えは掴むことができた。 「相手の前への圧力に押されて、縦パスを入れて攻撃の起点にならなければいけないところで、安パイに蹴り出してしまうことが多かったのは後悔しています。でも、まったく歯が立たないとは感じなかったし、空中戦も1対1も、相手の連動への対応も自分なりにはできた感触はありました」 大石はフィジカルに頼る守備ではなく、きちんと流れを読んだり、相手と駆け引きをしたりして頭脳でも守るタイプ。それゆえにこの日のピッチ上には幾重もの駆け引きが存在し、多くの情報がある中で頭をフル回転させて状況判断をしながらプレーをしていた。そのため「頭が疲れました」と語る大石の表情は充実感に満ちていた。 「今日の試合はめちゃくちゃ楽しかったですし、僕のこれからの人生のステップアップにおいて最高の相手でした。思い切ってやれたと思う。でも、『健闘した』ではダメなので、来年、必ず成長して帰ってきます」 最後に大石はこう口にしてスタジアムを去っていった。 「(全国トップレベルの)背中は見えている。手の届く位置まで来ていると思っています。だからこそ、ここからは本当に自分次第だと思っています」 確かな自信と野望、そして向上心に火をつけて。高校年代を代表するCBになる一歩を踏み出した彼の背中は心なしか大きく見えた。 取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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