脅しも暴力も無用。大手ゼネコンの極秘案件、明暗を分けた“デキる”ヤクザの交渉術
年功序列、終身雇用が崩壊し、欧米型の雇用環境に変わりつつある日本。これからのシビアな社会を生き抜くには、ただの「いい子」ではやっていけません。そんなときヒントになるのは、生き残りを賭けた戦いを日々、繰り広げている裏社会の人たち……いわゆるヤクザの生き方です。リーダーシップ、錬金術、逆境の乗り切り方など、彼らヤクザの「戦略」がよくわかる『ヤクザに学ぶサバイバル戦略』より、その一端をご紹介しましょう。
「動かない人」を動かすには?
バブル時は、地上げに関係するものと思われる放火騒ぎや、ダンプカー突入がよく新聞記事を賑わしたものだが、果たして荒っぽい手口を使った地上げ屋のみが最後の勝利を収めたのであろうか。 「いや、そうじゃない。私なんか、地権者や居住者に対して強圧をかけたことさえなかったよ。かといって、札束積めばいいというモンでもない。やはり交渉テクニックってものが必要になってくるんだけど、私の場合、これはと見込んだ物件に対しては粘り強く交渉を重ね、相手のいい分なりを可能な限り聞いてやっていた。それでたいがいは契約が成立。威嚇なんて愚の骨頂」 とは、地上げで財を成した某組長の弁だ。錬金交渉術とでもいったらいいであろうか。 では、地上げにおいて、勝ち組と負け組にわけたものは何だったのであろうか。次に紹介するのは、その典型的なケーススタディである。 バブル時、『A土地』『B不動産』という看板を掲げるふたつのヤクザ組織が、大手のゼネコン会社から、都内一等地の地上げを極秘に依頼されたことがあった。 A土地系の組員はまず地主の家に押しかけると、札束で頬を叩くようなやりかたで立ち退きを強要した。地主にそれを拒否されると、今度は借地権者を個別にまわり、おなじ方法でせまり、ときには暴力的な言辞をちらつかせさえした。 だが、それはまったく逆効果となり、一部の借地権者こそ大金を目の当たりにして立ち退きに同意したものの、大半は態度を硬化させる結果となった。交渉が決裂すると、今度はA土地系組員、深夜の無言電話や汚物のバラ撒きなど、お定まりの嫌がらせ作戦に打って出た。