「家族」だからこそ、できることとは。里子たちのおかげで喜びや楽しさが拡大中。【里親が考える「家族」の意味】
ポジティブな応援が励みに
里親をしていて何よりもうれしいのは、周りの方たちの温かい反応です。知っている人はもちろん、知らない人からも、ポジティブに応援してもらえるんです。 以前、ある朝のテレビ番組で、私の里親の活動を取り上げてくださったことがあります。放送されたのは一瞬でしたが、その後、ゴミ処理場に粗大ゴミを出しにいったら、そこの担当の方がその番組を見ていらして「頑張ってね」って。そんなふうに日々やっていることで、周りの人にポジティブに言ってもらえることって、すごく励みになるんです。まぁ、実の子を育てている世の中のお父さんお母さんも同じように頑張ってるので、里親である私だけが応援していただけるのも、なんだか申し訳ないんですけどね。 また、日常的に親切を受けることも多いんです。たとえば、米農家の方が「しっかり食べさせてあげて」と米を余分にくださったり、蕎麦屋さんが「大盛り料金はいらないよ」とおまけしてくださったり。実子たちだけのときは、厚かましくてお願いもできませんが、私も里子のためだから「よろしくお願いします」なんて、ちゃっかりいただいています(笑)。 千葉県出身のプロボクサーの那須川天心さんも、社会貢献をしたいと、うちに遊びに来てくださったり、ジムに招いてくださったりしています。里子たちがいるからこそ、私たちも一緒に楽しい思いをさせてもらっているんです。もちろん県が里親手当を払ってくれて、しっかりスーパーバイズしてくれているから、成り立つわけですが、それ以上のものを私たちは受け取っていると感じています。 今の世の中、自己責任論が声高に叫ばれていて「自分の子どもは親が責任持って育てるべき」という風潮がすごく強い。もちろん、子どもは自分の親が責任持って育てるべきだと思いますし、私もそうありたいと思って、自分の子どもたちが成人するまでは頑張ってきたつもりでしたが、やはり誰にでも事情はあります。 私も若い頃は、実親さんに対して「子どもにこんなことをするなんて」と、やさしい見方ができませんでしたが、年を重ねると、いろいろなことが見えてきました。 子どもを自分で育てられず、施設や里親に預ける実親さんも、不遇な子ども時代を過ごしていることが多い。だから、ここに面会に来て、延々と自分の話をするんです。私としては、もっと子どもの様子を見てよとか、子どもと親睦を深めてほしい、と思っていますが、実親さんは私に話を聞いてほしいわけです。実親さんたち自身が、親からそういう時間をもらっていないので、今それがほしくて、ほしくて、子どもどころじゃないんです。そう考えると、この社会は、いろいろな役割の人がいて、私には、たまたま自分の子以外の子を育てる時間もあるし、嫌いではない、というだけのことなのです。 ▶つづきの【後編】では、里親として里子を育てる吉成さんが考える「家族」とは、これからの夢についてお伺いします。 【profile】 吉成麻子さん ファミリーホーム運営、NPO法人 乳幼児家庭養育の会理事。大学卒業後、1989年日本中央競馬会入会、1993年退職、結婚、一女三男の母に。2004年千葉県養育里親登録、現在、5歳から小5までの4人の里子と暮らす。 取材・文/池田純子 画像提供/吉成麻子さん
ライター/池田純子