房総半島沖でスロースリップ現象を確認 今後千葉県沖で震度5弱程度の地震に警戒を
過去6回のスロースリップ現象では房総半島を中心とした領域で非定常地殻変動がそれぞれ約10日間観測されている。国土地理院は非定常地殻変動は現在も継続していると指摘。引き続き、この地殻変動を注意深く監視するとしている。
巨大地震との関係はまだよく分かっていない
政府の地震調査研究推進本部などによると、通常の地震はプレート運動などによって地下のプレートに蓄積された「ひずみエネルギー」が断層運動によって解放される現象だ。断層が高速でずれ動くと蓄積されたひずみエネルギーが解放され、地震波を放射する。
一方、スロースリップ現象による地震はプレート境界の断層がゆっくり動く。多くの場合は揺れを感じないが、わずかな地殻変動や通常より周期が長い地震波を放出する低周波微動がとらえられることがある。また房総半島沖の一連の現象のように有感地震を伴うケースもある。この現象による地震(スロー地震)は房総半島沖のほか、四国沖、九州の日向灘などで観測されている。このタイプの地震で大きな被害が出るケースはなかったが、2007年には震度5弱の地震を観測しており、今回も同程度の揺れに注意が必要だ。
この現象には短期的スロースリップと長期的スロースリップがあり、短期的なケースは数日間かけて、長期的ケースは数か月から数年かけてプレート境界がゆっくりすべり、東海地方や四国地方で過去に繰り返し発生していたと考えられている。
ここで気になるのは南海トラフ巨大地震など甚大な被害を出す巨大地震との関係だ。スロースリップ現象は巨大地震の発生メカニズム解明のための研究対象として注目されているが、最も気になる巨大地震との関係は現在の知見では未解明だ。つまりこの現象による地震の頻発が巨大地震の引き金になるのか、逆にたまったひずみが穏やかに解消されて巨大地震の危機は遠のくのかは、残念ながらよく分かっていない。
ただ、2011年3月11日に東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震ではマグニチュード(M)9.0の本震の2日前に前震(M7.3)が発生し、この後にスロースリップ現象が起きて、それが本震の破壊開始点に向かって移動。これが断層破壊を促進させた可能性があることがこれまでの研究で示されている。