昨年の房総半島台風上回る暴風か 台風10号の被害は過去の「3台風」並み?
2018年台風21号のような高潮が襲う可能性も
今からちょうど2年前の2018年9月4日。近畿地方を縦断した「台風21号」の接近・通過するにより、大阪湾と紀伊水道の沿岸では顕著な高潮と高波が発生した。関西国際空港で滑走路が冠水した映像を覚えている人も少なくないのではないか。 この時、大阪市では潮位は329センチまで急激に上昇。1961年の第2室戸台風(293センチ)を超え、過去最高潮位を更新している。 高潮は、台風の接近に伴って海面が異常に上昇する現象で、単なる高波とは異なる。主に気圧低下による「吸い上げ効果」と風による「吹き寄せ効果」によって発生する。台風の中心では気圧が低いため、その部分の空気が海面を吸い上げるように作用する。気圧が1ヘクトパスカル低くなると海面は約1センチ上昇する。これに加えて、台風の強風が沖から海岸に向かって吹くと、海水が海岸に吹き寄せられ、海面が上昇する。 2年前の台風21号は徳島県南部に上陸したが、この時の中心気圧は950ヘクトパスカル、最大風速あ45メートル。強さのカテゴリーは上から2番目の「非常に強い勢力」だった。気象庁によると、今回の台風10号は大東島地方や奄美地方に915ヘクトパスカル、最大風速55メートルで接近する予想となっており、九州南部に近づく段階でも台風21号より低い中心気圧を維持している見込みで、進路や接近時が満潮かどうかなどに左右されるが、場合によってはかなりの高潮に襲われる地域が出る可能性もある。気象庁の杉本主任予報官は「今回の場合、台風の中心近くで、南に向いている海岸などで特に警戒が必要だ」と話している。
なぜ早めの対策が必要か
昨年、一昨年に日本列島を襲った3つの台風で発生したような被害が、九州地方を中心に頻発しそうなのが今回の台風10号といえるだろう。気象庁の中本能久予報課長は4日午前の記者会見で「早めの避難、早めの対策をお願いしたい」と繰り返した。 なぜ、早めの対策の必要があるのか。 例えば、台風の接近時、潮位の上昇よりも先に暴風が吹き始める。また、河川氾濫についても、台風要因ではない大雨の場合は、河川の水位情報を見ながら避難行動を判断する時間的余裕がもてることもあるが、台風の場合はすでに暴風によって屋外行動が危険な場合がある。土砂災害も同様で、異変を感じたときにはすでに遅い可能性がある。そして、今回の台風10号は、その暴風が過去最強クラスである可能性がある。 今回の台風10号で予想されている最大瞬間風速80メートルは、気象庁が竜巻などの突風調査に使用する6段階の「日本版改良藤田スケール(JFEスケール)」にあてはめると上から3つ目の「JFE3」にあたる。木造十階が倒壊したり、鉄筋コンクリート造のマンションのベランダの手すりが変形したり、アスファルトがはがれて飛散するような被害が出るレベルだ。その下のレベルでも、ワンボックスカーやトラックが横転したり、電柱が破損したり、コンクリートブロック塀の大半が倒壊したり、広葉樹の幹が折れたりするような被害が考えられる。 このような暴風が吹き始めたら、まともに行動することはできない。だから、その前に身の安全を確保する必要があるというわけだ。 ただ、台風の場合は進路予想がある。天気が安定している今のうちに準備を整え、とにかく万全の態勢で台風を迎えたい。