<IFA>100周年を迎えて「変わるIFA」。エレクトロニクスショーに人を呼ぶ秘策とは?
世界最大規模のエレクトロニクスショー「IFA 2024」の開幕に先駆けて、9月4日にメッセ・ベルリンでオープニングカンファレンスが開かれた。IFAを主催するIFA Management社のCEO、ライフ・リントナー氏が壇上で掲げたIFAのコンセプトは「Inovation for All(みんなのためのイノベーション)」だ。 【写真】gfuのサラ・ヴァルネケ博士 ■100年を超えて「変わるIFA」を強調 IFAは今年、1924年の初開催から100周年のアニバーサリーを迎えた。赤を基調とするIFAのブランドカラーを一新して、「テレビ放送のカラーバーをオマージュした」(リントナー氏)という、ピンクや黄色、ブルーの原色を使った新しいIFAのキービジュアルが、記念すべき節目を迎えて「変わるIFA」を強くアピールしている。 リントナー氏は「IFAはエレクトロニクスの展示会、そして見本市として100年間に大きな発展を遂げてきた」と振り返りつつ、今後は「誰もが気軽に参加できるカルチャーイベントとしても発展させたい。そのために今年のIFA 2024では色々な新しいことに挑戦する」と意気込む。 展示においては生成AIとエレクトロニクスの展望を積極的に取り上げる。IFA Managementが主催するキーノートスピーチやトークセッションには、欧州を代表するAI関連のキーパーソンをゲストに招き、欧州発信の「AIの展望」に関するメッセージをIFAから世界に届ける。 リントナー氏は「人々の生活に密着したAIの展望」をIFAが示すべきであるとも強調している。筆者はプレスデイの初日にシーメンスやボッシュなど、欧州を代表する家電メーカーによるプレスカンファレンスに参加した。各社は長年取り組むスマート冷蔵庫、スマート洗濯機にAIに関連するテクノロジーがユーザーが必要とする便利な形で組み込んだ新製品を今年の年末以降に発売する。市場にもたらすインパクトは大きいと思う。 リントナー氏は「カルチャーイベントとしてのIFA」に多くの若年層を引き付けるための種を各所にまいた。今年新設される「IFA Contents Creators Hub」のエリアには、映像や音楽、写真などの手法により様々なクリエーションに挑む若いクリエイターを招き、IFAの期間中にライブパフォーマンスを実施する予定だ。メッセ・ベルリン会場の中心にある屋外イベント施設の「サマー・ガーデン」では、ミュージシャンのブライアン・アダムスによるコンサートのほか、ドイツのヒップ・ホップアーティストによるパフォーマンスが繰り広げられる。 常設展示エリアにもDJ向けオーディオの製品やテクノロジーにスポットをあてたり、若い来場者をゲーミングエリアに誘導するための施策にも力を入れる。 「私は生まれも育ちもベルリン。10代の頃に初めてIFAに足を運んでテレビの先端技術を目の当たりにした時の感動が今も忘れられない。IFAはテクノロジーとカルチャーのイノベーションの最先端として、今後も輝き続ける。そのために100周年の開催を是が非でも成功させたい」と、リントナー氏は力強くIFAの開幕を宣言した。 ■「生活を豊かにするAIテクノロジー」に関心が集まりはじめた プレスカンファレンスにはIFA Management社と共にIFAを主催するgfu(ドイツ民生通信エレクトロニクス協会)からサラ・ヴァルネケ博士が出席して、現在のエレクトロニクス市場の動向を語った。 ヴァルネケ氏は、新型コロナウィルス感染症によるパンデミックに起因する低迷傾向から「世界の市場は期待よりもゆっくりとだが回復している」と語りながら、昨今はいくつかの先進国ではインフレによる物価高の傾向が顕著に見られ、消費者が政治・経済の先行きにも不安を抱いていると分析する。ゆえに人々の消費は食品や燃料のような生活必需品が優先され、2024年上半期にgfuが実施した調査ではカメラとモバイル以外のカテゴリが全世界的に不調であったという。 一方で、人々が自身の健康状態を維持・増進するためのヘルスケアデバイスに向ける関心が高まっていたり、家庭の電気代節約にもつながる先端の省電力機能を備える生活家電には熱い視線が注がれているという。「生活家電とAIテクノロジーの結び付き」に一般の期待も集まっている。この機会に「IFA 2024を世界最大のホームアプライアンスのショーとしてアピールしたい」とヴァルネケ氏は語った。 世界中のスタートアップが集まるIFA NEXTや、イベント100周年を記念して「IFAの100周年」を振り返る特別展示も注目されそうだ。Phile-webの現地レポートをぜひご覧いただきたい。
山本敦