第93回選抜高校野球 健大高崎、コロナで一時寮閉鎖 「熱男リレー」がつないだ絆 /群馬
<センバツ高校野球> ◇動画、仲間の姿に発奮 19日に開幕する第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)に2年連続で選出された健大高崎は2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大で前回大会が中止になるという憂き目に遭った。一時は全国から集まる部員が実家に戻り、チームは空中分解の危機を迎えたが、離れ離れのナインの絆をつないだのは、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使った「熱男(あつお)リレー」だった。=一部地域既報 熱男リレーは、本塁打を放った後、こぶしを突き上げながら「熱男!」と叫ぶパフォーマンスでおなじみのソフトバンク・松田宣浩選手(37)が新型コロナで初の緊急事態宣言が出され外出自粛が求められた昨年4月に自身のインスタグラムで始めたものだ。ファンに向けた動画で「大変な時期ですけど、力を合わせて乗り越えていきましょう」と呼び掛け、「熱男!」と絶叫。最後に「次はあなたの番です」とチームメートの和田毅投手(40)らを指名し、続く和田投手がタレントの武井壮さん(47)につなぐなど、メッセージのリレーは芸能界にも広がった。 健大高崎は緊急事態宣言期間を含む昨年3月下旬~6月中旬、全体練習を中止した。部員の多くが暮らす寮も閉鎖され、ナインはそれぞれの実家に帰ることを余儀なくされた。そんな中、松田選手らの取り組みを見た当時の3年生部員32人が熱男リレーを始め、新3年生部員35人も同学年の間で“バトン”をつないだ。 どの選手も個性あふれる内容だった。前橋市出身の堀江晃生選手(3年)が声の高い滋賀県の木戸爽多選手(同)のものまねをしたり、神奈川県の浮田雄大選手(同)がバイクのヘルメットをかぶっておちゃらけてみたり。奈良県で一人、素振りやランニングをしていたという園山尋斗(ひろと)選手(同)は、元気そうな仲間の姿を見て「練習にも力が入った」と語り、浮田選手も「コロナ禍でも頑張らないといけないということを、熱男リレーを通して改めて認識した」と振り返る。 6月上旬に全員が寮に戻り、新チームが始動してからのナインの活躍は目を見張るばかりだった。昨秋の県大会は7本塁打とチーム打率4割超をマーク。関東大会では8本塁打、チーム打率3割8分の猛打で連覇を達成した。 小沢周平主将(同)は「誰かがミスをしたら、誰かがカバーする。チームの団結力はすごい」と胸を張る。センバツでは、全員がベンチ入りできるわけではない。しかし、強力打線が培われたのは、打撃投手を買って出た仲間たちの存在があってこそだ。コロナ禍の逆境を乗り越え、一回り成長したチームは、一丸となって悲願の「日本一」を目指す。【川地隆史】