忠臣蔵がなぜ300年近くも愛されてきたのか?文楽の「通し」を観るとよくわかるその理由
■ 2025年2月には、東京公演でも人気作の「通し」が上演 残りの段のうち、八段目と九段目は国立文楽劇場2025年1月公演第2部で上演。九段目「山科閑居(やましなかんきょ)の段」は、義太夫節最高の難曲といわれ、座頭格の太夫が語るのでお聴き逃しなく。十段目、十一段目が4月公演で上演されるのか、発表が待たれる。 歌舞伎ではどうしても役者を見に行く気持ちが強い。「〇〇の由良助」「〇〇のおかる」というように、誰が演じるかが重要となる。それに対し、人ではない人形が演じる文楽では、由良助、おかるという役そのものに純粋に感情移入できる。 また、人形を遣う者がセリフを発せず、太夫という語りのスペシャリストがセリフも情景描写もすべて担当することにより、浄瑠璃の持つドラマ性が際立ってくるのだ。文楽では字幕も出るので(これについては賛否両論あるが…)、江戸時代の言葉も視覚的に理解しやすい。 なぜ日本人が「忠臣蔵」にかくも心惹かれてきたのか、その理由を探りに、今回の通し公演を観に行ってみてはどうだろう。 ちなみに2025年2月の東京公演は、大化の改新を題材にした『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』の通し。第1部の「妹山背山の段」ではロミオとジュリエットにもたとえられる悲恋が描かれる。舞台中央に吉野川、その両脇には桜に彩られた妹山と背山。それぞれに太夫と三味線の出語り床が設えられ、掛け合いで悲劇が進んでいく演出が見事。こちらにもぜひ足を運んでほしい。 【公演情報】 国立文楽劇場開場40周年記念 11月文楽公演 国立文楽劇場(大阪・日本橋) 11月2日~11月24日(12日は休演) ●第1部 午前11時開演(午後3時20分終演予定) 『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』 大 序 鶴が岡兜改めの段・恋歌の段 二段目 桃井館力弥使者の段・ 本蔵松切の段 三段目 下馬先進物の段・腰元おかる文使いの段・殿中刃傷の段・裏門の段 四段目 花籠の段・塩谷判官切腹の段・城明渡しの段 ●第2部 午後4時開演(午後8時30分終演予定) 『靱猿(うつぼざる)』 『仮名手本忠臣蔵』 五段目 山崎街道出合いの段・二つ玉の段 六段目 身売りの段・早野勘平腹切の段 七段目 祇園一力茶屋の段 【そのほかの公演情報を知るには】 ●文楽協会 【チケットを手に入れるには】 ●大阪・東京公演 国立劇場チケットセンター(会員登録無料) 各種プレイガイドでも取り扱いあり(一部の公演に限られる場合も)。地方公演はそれぞれの劇場に問い合わせを。 【参考文献・参考サイト】 大谷晃一『文楽の女たち』文春新書 藤田洋『文楽ハンドブック』三省堂 松平盟子『文楽にアクセス』淡交社 三浦しをん『あやつられ文楽鑑賞』ポプラ社 山田庄一『文楽入門』文研出版 吉田玉男・山川静夫『文楽の男 吉田玉男の世界』 『演劇界増刊 忠臣蔵』演劇出版社 『新編日本古典文学全集 浄瑠璃集』小学館 ほか 文化デジタルライブラリー ※情報は記事公開時点(2024年10月29日現在)。
福持 名保美