新型iPhoneでアップルが描く「パーソナライズされたAI時代」
「AIを組み込んだ」と表現しても大げさではない新型iPhoneの発表によって、アップルが十分に成熟したスマートフォン市場において、今後どのように支配的な地位を継続しようとしているのか、その戦略が明らかになった。 今後、しばらくはAIを中心にiPhoneの新型への更新が進んでいくことになるかもしれない。その買い替えサイクルは以前ほど頻繁ではないかもしれないが、AIを中心としたアップルの戦略が完全に機能するのであれば、iPhoneだけではなく、あらゆるアップル製品の優位性として同社のビジネスを強化することになるだろう。 ■「カメラ強化とUIの洗練」以外の評価軸 iPhone 11/11 Proの投入以降、内蔵カメラの画質と機能を中心に、端末の革新を続けてきた。独自の半導体技術、高性能カメラユニット、そして洗練されたソフトウェアの組み合わせにより、毎年のように新しい魅力を引き出してきた。 ニューラルエンジンと呼ばれるNPU(Neural Processing Unit)の活用は、自然でありながらレタッチ不要の美しい写真を生成するために、アップルが膨大なリソースを注ぎ込んだ結果、進化してきたものだったが、AI時代の今日においてこの開発はアップルの新しい市場支配の技術基盤になるかも入れない。 アップルが投入したiPhone 16/16 Proシリーズもまた、カメラの機能強化、画質強化、そしてハードウェアと連動した使いやすさの向上といった要素は盛り込まれている。今後もこの領域の投資は続けるだろう。 しかし、アップルがしたたかな点は、大規模言語モデルを活用した「あなたのことを最もよく知るアシスタント」を製品に組み込むかたちで統合させる、極めて野心的なプランを実行したことにある。 米国内では年内、日本をはじめとするいくつかの地域では来年の前半に提供が開始されるApple Intelligenceは、手元にある端末ならではのパーソナルな情報を扱いながら、同時にクラウドでしか実現できない大規模な演算能力を用いたAIサービスを両立させている。 iPhoneに集まる情報を用いてユーザーの使い方や生活全体を包括的に学習、支援する革新的なApple Intelligenceは、iPhoneの標準機能のさまざまな領域で活用される上、またボイスアシスタントのSiriと連動することで、簡単で自然なインタラクションを通じて生活とビジネスの効率、利便性を高めてくれるだろう。 一般的なクラウド上のAIチャットサービスは、一般的なインターネットの中にある情報を事前学習させたものであり、利用者のパーソナルな情報を反映して、生活や仕事の細かな部分に寄り添ったアドバイスを提供することはない。