Jリーグでチャントを歌える日はいつ訪れるのか…新型コロナ新規感染者減少で応援方法の規制緩和も
ゴール裏全体を覆うビッグフラッグは、ファン・サポーターがその下に入って揺り動かす過程で密閉空間ができるために引き続き自粛対象となる。対照的にクラブフラッグやタオルマフラーを振り回す応援方法は、細かいルールやファン・サポーターへの告知啓発方法を決める4日の運営担当者会議をへて正式決定される見通しになった。 昨年2月の開幕節を終えた段階で、Jリーグは他のスポーツに先駆けて活動を休止した。約4ヵ月におよんだ中断期間で、未知の存在だった新型コロナウイルス感染症についてさまざまな対策が講じられ、再開へ向けたガイドラインが完成・更新されてきた。 無観客から有観客に変わっても、当初はクラブフラッグやタオルマフラーをふることだけでなく、いまではOKの太鼓を叩いての応援や手拍子すらも禁止されていた。時間の経過とともに知見を得ながら、徐々に新型コロナウイルス禍前の光景を取り戻してきた。 感染状況が現状で減少していくと仮定する来シーズンを、村井チェアマンは「基本的には100%のお客さまを迎えることを目指したい」と見すえた上でこう続けた。 「できる限り観客数を増やしていくだけではなくて、第6波が来るようならば再びグッと抑える。感染状況に合わせてコントロールしていく、機動性を高めたオペレーションの運用ができるようにしていくのも非常に重要だと考えています」 収容人員の100%が解禁されれば、コロナ禍前へさらに大きく近づく。しかし、完全に日常を取り戻す上で高く、険しいハードルとして存在するのが、ファン・サポーターが大きな声を出し、あるいはクラブや選手のチャントを歌っての応援となる。
ファン・サポーターが刹那に抱く感情を声に変え、スタジアムが一体化する瞬間を、村井チェアマンは「最後の大きな砦」と位置づけ、自粛をお願いしてきたここまでの過程を「私自身、非常に心苦しく思っています」と振り返ったことがある。 10月12日のカタールワールドカップ・アジア最終予選では、日本代表が試合終了間際のオウンゴールでオーストラリア代表からリードを奪った直後に、埼玉スタジアムのゴール裏から響いた、一部サポーターが歌った代表のチャントが物議を醸した。 一瞬だったとはいえ、日本サッカー協会(JFA)が定めるガイドラインを破る明確なルール違反。我慢を重ねてきたJクラブのファン・サポーターを中心に、激しい批判が巻き起こったなかでJFAも一夜明けて公式ホームページ上に謝罪文を掲載した。 「観客の皆さまに観戦ルールやマナーを順守していただいている中、今回、一部サポーターが大声で歌う、コールを行うなど、周囲の皆さまに不安を与え、ルールをしっかり守って応援いただいている方々に不快な思いをさせる行為を行いました。このような禁止行為があったことは極めて残念なことであり、また、大会を主管するJFAとしてルールを徹底できなかったことを衷心よりお詫び申し上げる次第です」(原文ママ) 昨年2月までは当たり前だった、大声を張りあげ、そしてチャントを歌って応援できる光景は再び訪れるのか。新型コロナウイルス対策連絡会議後にオンラインで行われた記者会見でも、専門家チームに対してメディアから質問が飛んだ。 「この質問は基本的に、マスクはいつ取れるんだ、という点に関わってきますよね」 専門家チームの一人、愛知医科大学大学院医学研究科の三鴨廣繁教授は、日常生活でマスクを必要としなくなる時期とリンクさせながらこんな言葉を残している。 「一般の方々へ向けた講演でよく質問されるんですけど、私は『マスクを取るのは、特に屋内では2、3年は厳しいかもしれない』とお答えしています。ただ、マスクを取って応援したい、と思うのは人間の心理ですよね。今後は実証実験などもなかなか難しいかもしれませんが、どこかで超えなければいけないハードルだと思っています」