なぜ阪神はヤクルトに“無敵”を誇ったエース青柳でも勝てなかったのか…泥沼7連敗で5位転落
守備のミスで青柳の闘争心にも陰りが見えた。3回も先頭の元山にインサイドの変化球を引っ張られて、ライトオーバーの二塁打を許し、一死三塁となって村上である。 青柳は、インサイドをカットボールで突いたが、詰まりながらもセンター前にタイムリーを落とされて3失点目。さらに宮本に、ど真ん中のスライダーをまたライトへ引っ張られ一、三塁とされ、中村のセンターへの大きな犠飛で4失点目。大山、近本、中野を欠き、得点力がガタ落ちの阪神にとって、あまりに痛い失点となった。青柳は、5回の打席で代打を送られ、まさかの4回KOという結果に終わった。 酷なようだが、青柳が、対ヤクルトの3試合連続の完封をするしか勝機はなかったのかもしれない。1点もやらない野球を追求すればするほど、緊張や焦りが生まれ、ミスと背中合わせとなる。しかし、今の阪神がトンネルを抜け出すためには、その野球しかない。 なのに自滅していては話にならない。開幕9連敗の教訓が、まったく生かされていないのは、ヤクルト、西武で監督を務めた球界大御所である広岡達朗氏が、口を酸っぱくして言い続けてきた「阪神の監督、コーチはいったい何を教えているのか?」という問題に行きつく。 遅まきながら矢野監督も動いた。 8月の12試合で打率.103と低迷する佐藤を4番から外し6番に下げ、ロハスジュニア、ロドリゲスの外国人コンビで4、5番を組んだ。だが、その打線変更は空回りした。 偶然にも青柳と今季2度マッチアップ。「3回は負けられない」と燃えるものがあったヤクルト先発の高梨の前に6回まで9三振と苦しみ、佐藤は三塁打を含む2安打と奮起したが、いずれも得点にはつながらなかった。 8月の打率.429と好調だった新4番のロハスはノーヒット。8回一死一、二塁のチャンスには三塁ファウルフライに倒れた。ロドリゲスは、2打席連続三振に終わると4回でベンチへ下げられて原口と交代した。そもそも5番抜擢の根拠が不透明な采配である。9回に田口を降板させ、守護神のマクガフを引きずり出して2点差に詰め寄ることには成功したが、序盤の失点と青木に打たれた7回のダメ押しの一発が響いた。 スポーツ各紙の報道によると矢野監督は、「同じような試合展開でやられている。何とかしないと、とみんなやってくれているんだろうが形にならない」と嘆いたという。 佐藤のスランプを巡っては、同じく不振の岡本を6番に下げて、中田翔を4番に抜擢した巨人の原采配と比べられ、矢野監督がいつ動くかが議論になっていた。だが、巨人と違い4番の代役がいなかったのが阪神の現実。ロハスジュニアの4番では、相手バッテリーに与えるプレッシャーは少ない。 最大「16」あった借金を貯金「3」まで驚異のV字回復させたが、再び借金は「4」に逆戻りし、首位ヤクルトとのゲーム差は11、2位横浜DeNAとも4差に広がった。しかしCS出場権を争う3位の巨人とは1差、4位の広島とは0.5差で、まだ混沌とした状況。この日、新型コロナ感染による隔離期間が明けて、練習に参加した大山、中野は、早ければ次カードとなる19日からの巨人戦で復帰予定だというが、戦力が整うまで、ベンチワークで1点を奪い、守り勝つ野球で乗り切るしかないだろう。今日17日の先発予定は伊藤将。防御率1.69の伊藤は今季対ヤクルト初先発となる。