物価高「1日1食で体重7kg減」、猛暑でクーラー使えず…あしなが遺児学生の厳しい現実
遺児らに奨学金を給付する「あしなが育英会」による調査で、親が亡くなるなどした困窮家庭の9割以上が「収入が物価上昇をカバーできない」と回答し、物価高騰に伴う負担感の大きさが浮き彫りになった。生後間もなく父親を亡くし、同会の奨学金で広島市内の私立大に通う男子学生も物価高のあおりで綱渡りの生活だ。それでも、学びを深められる環境に「まだ恵まれている」とも。今度は後輩遺児の「進学の夢」を後押しする形で恩返しをしたいという。 【写真】募金協力への呼び掛けに応じる子供 ■過去最低の採用率 男子学生は、広島工業大3年の小泉光悠(みつはる)さん(21)。10月中~下旬の4日間、広島都心の百貨店前で通行人らに募金を求めた。「皆さんのご寄付が大きな力となって遺児たちの進学の夢をかなえます」-。今、大学に通えるのも奨学金があったから、との思いを強くしつつ。 あしなが学生募金事務局中国ブロック代表も務める小泉さんによると、4日間で集まったのは約380万円。全額を同会に寄付した。全国の街頭では、9千万円以上の浄財が寄せられたという。 遺児らを取り巻く環境は厳しさを増している。同会によると、高校に入学する生徒や在学生からの奨学金申請は今年度、過去最多の3487人に上った。だが、資金不足のため採用できたのは1538人にとどまり、採用率は過去最低の44・1%だった。 ■あきらめたくない 「希望者の半分にも届けられていない。生活苦の家庭がそれだけ多い」と危機感を募らせる小泉さん。自身が物心をつく頃には父はおらず、母と双子の弟との3人暮らし。母はスーパーの品出しのパートで厳しい家計を支えていた。 そんな生活が当たり前と思っていたが、徐々に他の子と「違う」と感じた。中学生にもなれば、おしゃれに気を使いたい年代だが、はやりの服は高くてとても買えない。野球部でも、入部当初に買ってもらったグラブを引退まで大切に使った。 「就職を前提に考えていた」といい、地元の工業高校へ。次第に「もっと勉強したい」との思いを抑えられなくなる。弟も進学希望で、高校3年の春には兄弟で大げんかした。これ以上、母に負担は掛けたくない、との思いは一緒。でも、自分だけが進学をあきらめたくない。 そんなとき、母が提案してくれたのが、同会の奨学金だった。おかげで小泉さんは広島工業大へ、弟は福岡の私大へ進学できた。もっとも、同会から給付される1カ月あたりの奨学金は6万7千円の寮費だけで「ほぼ消える」(小泉さん)。物価高で寮費は入学時より5千円以上も値上がりしたという。