赤字の「坊っちゃん列車」にメンテ費半額補助へ 公費投入の妥当性と公共性に揺れた松山市
赤字続きで運行継続が危ぶまれている松山市内を走る路面電車「坊っちゃん列車」に対し、市は年間4千万~5千万円に上るメンテナンス費用を最大半額補助する方針を決めた。8割近くが運行継続を望んだ市民アンケートの結果などを基に「公共性・公益性がある」と判断した。運行する伊予鉄道(同市)の支援要請から約1年。熟議を経て再確認されたのは坊っちゃん列車の「観光コンテンツとしての価値」だった。とはいえ、赤字体質が解消できたとはいえない中での税金投入となるだけに、市民の理解を得るための努力が欠かせない。 【写真】伊予鉄道の「坊っちゃん列車」。レトロな風貌で市の観光コンテンツの一つとなっている ■人手不足も追い打ち 「安全に、継続的に運行できるよう財源を創出して支援したい」 11月28日に松山市役所で開かれた「坊っちゃん列車を考える会」。昨年12月の初開催から3回目となった会合で、藤田仁副市長が財政支援を表明した。 具体的には毎年のメンテナンス費用について上限額を定めた上で最大半額を補助する。補助はこれまで、3年に1度必要な法定検査費用の3分の1(上限400万円)にとどまっており、大幅な拡充となる。市は今後、伊予鉄側と上限枠について協議し、来年度の当初予算案に計上する。 委員を務める商工・観光団体や金融機関、有識者らも市の判断に賛同。伊予鉄の清水一郎社長は「できるだけ長く、安全に運行できるように努めたい」と述べ、市の支援に感謝の意を示した。 現在の坊っちゃん列車は市の要請を受けて平成13年に運行を開始。当初から採算が厳しく、毎年約2300万~1億円の赤字が続く。そのうえ、近年の人手不足も追い打ちとなり、昨年11月から約5カ月間運休。「民間企業の努力の限界を超えている」(清水社長)として市に支援を求めた。 市は「考える会」や伊予鉄との協議、アンケートや経済効果の調査などを実施。約1年間をかけ「一定の必要性と公共性がある」と結論付けた。 ■都市ブランドにも寄与 運行開始時に市からの要請があったとはいえ、民間会社の事業に税金を投入するという今回の決定。地域の観光振興に詳しい香川大経済学部の山崎隆之教授は「坊っちゃん列車は観光の素材であり、公共交通も担う。税金の使い道として妥当性がある」と理解を示す。 少子高齢化や過疎化に伴う沿線人口の減少を受け、全国の地方鉄道は厳しい状況が続いている。