全盲ながら子供3人を育てた両親 毎日の苦難と工夫、温かかった周囲のサポート
視覚障害者の能力を生かしたい
そんな両親の姿を見続け、自身も2児の母になった友佳理さんが妹たちとともに「みみよみ」を設立した。それは必然かもしれないと友佳理さんは言う。 「子どものころから、すごく悔しかったんですよ。視覚障害があっても、彼らには素晴らしい“声”や“語り”という能力がある。なのに、それを生かす場がないのは不公平じゃないか、と」 幼い友佳理さんの心に刻まれた悔しさともどかしさ。それは、視覚障害者の就労状況の数字にも表れている。
現在、日本の視覚障害者の数は約30万人。「令和2年度 障害者の職業紹介状況」(厚生労働省)によると、身体障害者全体の就職件数が約2万件あるのに対し、視覚障害者が占める割合は約7.5%(1500件)にとどまっている。視覚障害者には、デスクワーク中心の事務職の求人が少ないことがその一因とされている。彼らの多くは「あはき業」(あんま・はり・きゅう)に就いているのが現状で、就労機会は限定的だ。友佳理さんは視覚障害者の可能性を広げたいと言う。 「多くの人々に、同じ社会に生きる身近な隣人として、視覚障害者の持つ能力を知ってもらいたい。『みみよみ』のサービスを通じて、そんな未来が実現できたらいいなと思っています」
------ 庄司里紗(しょうじ・りさ) ライター。1974年、神奈川県生まれ。大学卒業後、ライターとして多数の雑誌、Webメディア等に寄稿。現在は地方創生、共生社会、ゲノムデータをめぐる倫理問題などを関心領域に執筆している。