水分が不足すると血液がドロドロになる?意外と知らない、血液と水分摂取の関係|管理栄養士が解説
夏の水分不足がまねくのは、熱中症や脱水症状だけではありません。体の水分不足は血液にも悪影響を及ぼし、そのまま放置していると深刻な病気をまねくおそれがあります。そこでこの記事では、血液と水分摂取の関係について管理栄養士が解説します。水分補給のポイントも紹介するので、生活で実践してみてくださいね。 〈写真〉水分が不足すると血液がドロドロになる?意外と知らない、血液と水分摂取の関係 ■水分不足はドロドロ血液の原因に 血液はすべてが液体のように見えますが、実は45%を赤血球や白血球、血小板などの固体成分が占めています。残りの55%が、血漿(けっしょう)と呼ばれる液体成分です。血漿は約90%が水分で構成されており、その中にたんぱく質や糖質、脂質が溶け込んでいます。つまり、血液の半分程度が水分であるといえます。 そのため、体内の水分量が血液に与える影響は決して少なくありません。体内の水分が不足すると、血液の水分量も減少します。しかし固形成分の量は変わらないので、血液は濃度が高くなります。これが「ドロドロ血液」といわれる状態です。 普段から血糖値が高めの方、血中脂質が多い方は糖質や脂質も濃縮されます。血液の水分量が少なくなると糖質や脂質の濃度が高くなり、普段よりも血糖が多い「ベタベタ血液」や、血中脂質が多い「ギトギト血液」になってしまうでしょう。 ■ドロドロ血液がまねく病気 ドロドロ、ベタベタ、ギトギト、いずれの状態も血液の粘度が高くなっています。血液に粘りがあると血行が悪くなり、体中に栄養や水分をスムーズに届けられなくなるため、体調不良に陥りやすくなるでしょう。 さらに、血液の粘度が高いと、血中成分の固まりである血栓ができやすくなります。血栓が血管に詰まれば心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気が起こり、場合によっては命を落とすこともあります。 血液中の糖質や脂質の濃度が高まると懸念されるのが、動脈硬化です。動脈硬化も、心筋梗塞や脳梗塞の原因のひとつとされています。そのほか、手足にしびれや痛みが生じる閉塞性動脈硬化症や、大動脈がこぶのように膨らむ大動脈瘤をまねく可能性もあります。 また、血液が濃縮されて血糖が多い状態が続くと、赤血球にも悪影響が現れるでしょう。正常な赤血球は柔軟性があり、細い血管でも形を変えながら通過します。しかし、血糖が多いと赤血球の柔軟性が失われて固くなり、細い血管を通りにくくなります。 その結果、流れが悪い血液を無理に押し流そうとして血圧が高くなったり、血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞が起きたりするでしょう。 ■水分補給でドロドロ血液を予防しよう 発汗や排尿などにより、人は多くの水分を失いながら過ごしています。生命を維持するためには、失った水分を補わなければなりません。 成人男性では、飲料として1日に1.2リットルの水分を摂取する必要があります。普段、水分摂取をあまり意識していない人にとって、1日1.2リットルはかなり多いと感じるのではないでしょうか?そのうえ夏場は汗をかくため、より多くの水分を摂取すべきとされています。 水分摂取は少量ずつ、こまめに行うことが大切です。とはいえ水分補給の習慣がない方は、まずは起床後・入浴前・入浴後・就寝前の4つのタイミングでは欠かさずに、コップ1杯(約200ml)の水分を摂取するよう心掛けてみましょう。 就寝中と入浴中は意外と大量の汗をかいています。そのため、就寝と入浴の前後で水分を摂取すると過度の水分不足を防げるでしょう。 なお、水分補給に利用する飲み物は水または麦茶がおすすめです。コーヒーや緑茶、紅茶には利尿作用があるカフェインが含まれるため、楽しみに飲む程度にとどめましょう。また、腎機能の低下などにより水分摂取が制限されている方は、医師の指示に従ってください。 水分不足は熱中症や脱水をまねくだけではなく、血液の濃度を高めて、心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な疾患のリスクを増加させます。水分摂取を習慣にして、血液から健康をサポートしましょう。 【参考文献】 日本赤十字社「血液の基礎知識」 日本血栓止血学会「血栓症ガイドブック」 環境省「『健康のため水を飲もう』推進運動」 熱中症予防情報サイト「熱中症環境保健マニュアル2022」 ライター/いしもとめぐみ(管理栄養士)
いしもとめぐみ