韓国の保守勢力が他国とは異なる理由【寄稿】
ハ・ジョンガン|聖公会大学労働アカデミー主任教授
そもそも「保守」は悪い人たちを指す概念ではない。国ごとに様々な条件に従って様々なかたちがあるが、伝統を重視し、知識を尊重し、品位を備え、礼儀作法を守り、愛国心に燃える、というのが保守勢力の特徴であり共通点だ。 西洋映画を見るとたまに、巨大な邸宅のロビーの壁に家門を象徴する先祖の肖像画が並んでおり、主が訪問客に誇らしげに説明する場面が出てくる。戦争に行って命をささげたり、身体の一部を失ったりした経歴を持つ人が多い。国が危機に直面した時、真っ先に駆けつけて自らを犠牲にするというのが、他国の保守家門の誇りだ。 韓国の保守は少々異なる。今は大きく変化したが、イラク戦争への国軍派遣同意案が可決された第16代国会などは、国会議員の息子らの兵役免除率は23.5%で、一般人の2.5%の9.4倍にも達した。当時、国会国防委に所属していたチャン・ヨンダル議員の主張によると、韓国を代表する4つの財閥グループの2世の兵役免除率は56.5%で、一般人の実に22倍だった。 韓国の保守勢力の形成過程は、他国と大きく異なっていた。日帝強占期には朝鮮人にも巡査や判事や検事になった人々がいた。日本人に劣らず独立運動家たちを逮捕し、捜査で厳しく拷問し、重刑を宣告した。実は、よりひどく事に当たったケースも多かった。だから「同族の方が悪辣だった」と言われるのだ。 朝鮮人の巡査の方が日本人巡査より独立運動家とその家族を苦しめたのは、「よりよく知っていたから」だとよく言われるが、それは言い訳に過ぎない。そうせざるを得ない構造がある。すでにその人々は同族との距離感が生じていた存在だが、かといって支配勢力内では日本人として認められていたわけではなかった。何倍も忠誠を尽くしてはじめて、自らの競争力が維持できた。そのような現象は、学生運動や労働運動を経て保守政党に入った政治家の態度を見れば、容易に見当がつく。もともとの保守政党の政治家よりはるかに極右的な発言をする。それでも、政党内部での支持勢力はあまり多くない。その発言はますます過激にならざるを得ない。 植民地とされていた他の国々は、解放された後にそのような人々の大半を監獄送りにしたり処刑したりした。第2次世界大戦時、フランスはドイツに4年あまり占領されていたが、戦後、ナチスの協力者をあぶり出して6700人あまりに死刑を宣告し、2万6千人あまりを懲役刑に処した。政治家、ジャーナリスト、文人などにはより重い処罰を科した。にもかかわらず、欧州の他の国々からは「過去清算が穏健すぎる」という厳しい視線が向けられた。 韓国は日本に40年く占領されていたが、解放された後、そのような人々をただの1人としてまともに処罰できなかった。解放されるやいなや分断されたため、過去を清算すべき重要な時期に戦争をしていた。戦争が終わってからは軍事政権が30年あまりも支配していたため、植民地時代の過ちを正す過去の清算の機会をほぼ完璧に失った。同族を裏切って占領勢力に協力して出世した人々が、解放後もそっくりそのまま生き残り、富と権力を蓄積し、社会の支配勢力を形成した例は、大韓民国の他に見出すのは難しい。 映画「ザ・キング」では、先輩の部長検事(チョン・ウソン)が後輩の新任検事(チョ・インソン)に次のように言い聞かせている。「プライドや正義、そんなダサいものは捨てようぜ。歴史的に流れるように進め! ただ権力のそばにいろ! プライドを捨てて捕まえろよ…。それを逃したり、闘ったりしてうまくいった奴はいない。韓国の歴史にそんな奴はいない。親日派とか、あいつらはどうだ? みんな財閥だし、長官や次官やってるし、韓国は。独立軍だった人たちは、一月60万ウォンの年金でかろうじて暮らしてる。最近の子どもたちはどうして歴史を学ばない? 学ぶべきだろう、歴史を!」 韓国社会では、そのようにして成功した社会支配勢力が自らを「保守」と称するケースが多い。韓国の「保守」が他国の「保守」と異なる理由はここにある。他国では道徳的優越性を誇ることは「保守」の徳目だが、韓国社会では保守勢力の道徳性が弱いということを否定するのは難しい。 他国においても、保守勢力は既存の体制の変化を追求する労働運動を非常に否定的な視線で眺める。労働者の力が強まると自分たちの分け前が減るという浅はかな打算も一役買っている。だが、韓国の保守勢力はその形成過程からして異なる。韓国の被雇用者の会社員、すなわち労働者が他国では見られない苛酷な弾圧に苦しめられる理由はここにある。 ハ・ジョンガン|聖公会大学労働アカデミー主任教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )