ファレルが惚れ込んだアーカイブクオリティ──流通の壁を「カサノバ ヴィンテージ」が壊す日
表参道や銀座など、都内で5店舗を展開する「カサノバ ヴィンテージ(CASANOVA VINTAGE)」は、セカンドハンド(二次流通)ショップとしては異色だ。ルイ・ヴィトンのメンズ クリエイティブ・ディレクターであるファレル・ウィリアムスが主宰するデジタルオークションハウスのジュピター(JOOPITER)とコラボレーションし、話題を集めているのだ。 【写真の記事を読む】表参道や銀座など、都内で5店舗を展開するカサノバ ヴィンテージ(CASANOVA VINTAGE)。
ファレルとのコラボレーション
2019年12月、東京・表参道に「カサノバ ヴィンテージ」をオープンすると、翌年に「カサノバ ヴィンテージ 離れ」を、今年4月に「カサノバ 銀座」、さらに10月には買取専門である南青山の「カサノバ buysell」と神宮前に「カサノバ マーケット」をオープン。業界では最も勢いのあるショップと言っても過言ではない。店長の弁慶亘(写真左)に訊くと、最初はオンラインのみでの展開だったという。 「社長のWATANABEがスタートしたカサノバは、トレンドを意識しつつ、ふたりが好きなものを中心にセレクト、販売をしていました。あとはBtoB、いわゆる卸の業務を中心にやっていました。そんな中、僕らの商品セレクトを評価してくれるお客様や企業の方が多かったことから、実店舗を出店する決心をしました。どうせやるなら、日本のファッションやカルチャーの中心で、若い頃からずっと憧れの場所である表参道で、と決めていました。またラグジュアリーなエリアでもあるので、扱う商材との親和性も高かったことも同地に決めた要因の一つです」 「ジュピターで開催されたNIGO®さんのパーソナル・アーカイブ・セール“フロム ミー トゥ ユー(From Me to You)”に出品されていたアイテムを購入したことがきっかけで、その後、銀座店がオープンしたタイミングで、ファレルさんが来店されました。そのときに接客もさせていただいたのですが、ルイ・ヴィトンの過去の限定コレクションなど、商品の背景について説明させていただきました。その時に、ファレルさん自身も見たことのなかったアーカイブもあったので、いくつか購入されて。その時にジュピターの取り組みについてお話をしていただき、先方から『クロムハーツを出品していただけませんか』と打診され、参加させていただくことになったんです。クロムハーツはうちの主力商品の一つなので、嬉しかったです。また後から聞いた話では、最初にジュピター関係のスタッフさんが、リサーチのためにお忍びで来店し、そのあとにファレルさんが来店をされたみたいです。それからというもの、昨年11月に香港で開催されたルイ・ヴィトンの2024年プレフォールコレクションに招待していただき、フロントローでショーに参加したり、すごくよくしていただいています」 2018年にグッチの秋冬コレクションに登場した、アメリカ・ハーレムの伝説的なショップ「ダッパー・ダン」のコラボコレクションでは、オフィシャルがブートレグ(著作権や許諾を取らずに製造、流通された非正規品)を取り上げて話題になった。この時も業界は騒然としたが、今回は、本家のクリエイティブ·ディレクターがセカンドハンドショップに直接来店し、仕事を依頼、さらに自社の商品を購入したのだ。ファッション業界的には、かなり衝撃的な出来事だ。 「ファレルさんは私たちにとっては雲の上の存在なので、ご来店していただくだけでもありがたいところを、一緒にお仕事をさせてもらえるとは思ってもみなかったので、ただただ驚くばかりで。お話しをさせていただく中で、ファレルさんは、二次流通をすごく大切にされているように感じました。日本では中古品というイメージが強いですが、ファレルさんはアートピースとして評価していただいているようでしたね。特にハイブランドともなると、時代ごとのデザイナーの背景とかあったりしますが、そういうことに対してすごく詳しかったですし、興味をお持ちのようでした」 カサノバ ヴィンテージにはファレル以外にも、デヴィッド・ベッカムやキム・カーダシアンからダニエル・アーシャムまで、海外から有名なセレブが数多く来店している。これほどまでに支持される理由は、どこにあるのだろうか。 「どうやって広まったのか具体的なことはわかりません。SNSで注目していただいたり、あとはセレブ周りのスタイリストさんやマネージャーさんらの口添えなどから、実際に店舗へ足を運んでいただいているのかなと考えています。あとうちは私や社長を含め、スタッフ全員がファッションやカルチャーが大好きなので、セレクトも一切妥協しませんし、接客をさせていただく際に商品の魅力をちゃんと伝えられているのだだと思います」 今回の経験を機に二次流通のイメージを変えたいと、弁慶は未来を見据える。 二次流通業界自体がこれまで、ネガティブなイメージが強かったですが、最近は海外を中心に、ブランドのアーカイブが一つの作品として評価される時代になっています。海外のお客さまが驚かれるのは、商品のコンディションの素晴らしさ。10年以上前のものが新品同様の状態で見つかることは、日本人がものを大事にする心を持っているからだと思います。これからも、ファションを通じてセカンドハンドの魅力を世界に発信していきたいです。そしていつか、一次流通と二次流通の壁がなくなり、お互いに行き来できるような世界になったらいいなと思います。 CASANOVA VINTAGE 東京都渋谷区神宮前5-12-10 1F TEL : 03-6803-8612 / FAX : 03-6803-8613 営業時間 : 12:00~20:00(不定休) CASANOVA VINTAGE 離れ 東京都渋谷区神宮前5-11-6 TEL : 03-6452-6117 営業時間 : 12:00~20:00(不定休)
写真・菅原麻里 文・オオサワ系