文武両道を後押しする選手権全国8強・名古屋サッカー部の取り組み【文蹴両道】
サッカー部としても勉強時間を確保しようとスケジュールに工夫を施している。練習時間は基本的に90分で設定。校内にある1面のピッチを中学のサッカー部、高校のラグビー部で分け合うため放課後を2つの時間帯に分けて練習時間と場所を上手く確保しているという。 朝練を上手く活用していることもポイントだ。近年、関東や関西の大学サッカー部は選手がきちんと授業を受けることができるように授業前に練習を行なうチームが増えている。名古屋高もそうした先例を習って、7時15分から8時までをチームとしての朝練として設定。チーム内の各カテゴリーに分かれて活動しているという。 例えば、1年生が火曜日の朝に筋トレをしていると、他のカテゴリーはグラウンドでボールを蹴る。その翌日には1年生がグラウンドを使い、他のカテゴリーが筋トレに励む。時には体育館を使ってフットサルをするなど練習場所をフル活用。朝練を活用することで、週に数日は放課後に練習を行なわないカテゴリーを設けている。「週に何時間練習したかを考え、みんなが同じぐらいの練習時間になるよう計算している。平日は330分が目安で、そこに土日の試合が入ってくる」と説明するのは山田武久監督だ。 勉強時間を確保しやすいようスケジュールを早めに伝えていることもポイントだ。“予定なんて変わるもの”というスタンスのチームもあるが、それでは選手はスケジュールが立てられない。予定が見えやすい平日のスケジュールは、半年分をまとめて出す。インターハイや選手権などトーナメントが入ってくる土日は結果次第で予定が変わることも多いため、スケジュールが立てにくいが、それでも週の木曜日までには確定させて、選手に伝えている。事前に隙間時間を提示しているため、部員たちは勉強の時間を確保しやすい。「練習までの時間がある時は教室で少しでも勉強している」と話すMF田口想太(2年)を筆頭に時間を上手く作ってくれる部の利点を活かす選手は多い。 文武両道ではあるが、文武をきっちり切り分けているのも特徴かもしれない。山田武久監督は英語の授業と担任を受け持っているため、「ちゃんと授業を受けていないといった情報がどうしても頭に入って純粋にサッカーだけを評価できない」と苦笑いする。「選手はサッカーがやりたくてこの学校に来てくれている。学校とサッカーが同一視されることが良いこともあれば、悪いこともある。学校生活をちゃんとしなければいけないけど、そこだけに引っ張られるのは可哀そう」。そう続けるようにサッカーを切り分けて見られるよう大久保ヘッドコーチを含め、外部コーチを受け入れているという。 学校、サッカーの仕組みによって名古屋の選手たちには勉強に取り組む意識が自然と身に付いている。選手権期間中も授業勉強に励む3年生の存在が話題となったが、名古屋の選手にとっては自然なこと。「勉強することが日常なのでメンタルコントロールがしやすかったと思う。高校生は選手権という舞台に浮ついて普段やらないことをしがちな中、勉強をしてからこそ、いつも通りできた」と山田監督は話す。名古屋の取り組みには他校の参考になる部分があるはずだ。 (文・写真=森田将義)