2024年クラウドAIを巡る5つのトレンド:想像を超えるスピードと規模感でAIが現実のものに
4.バーティカルAIが従来のSaaSを凌駕した事業機会を産み出す
バーティカルSaaSは最初のクラウド革命時に業界を変革した立役者であり、現在米国のバーティカルSaaS上場企業Top20社の合計時価総額は約3,000億ドルに達している。 現在、LLMの台頭により、従来のバーティカルSaaSの範囲外だった業界をターゲットとする新たなLLMネイティブスタートアップが生まれ、バーティカルSaaSの次の波が巻き起ころうとしているという。 そのひとつが、コストの高い反復的な言語ベースのタスクをターゲットにしたバーティカルAIアプリケーションだ。 反復的な言語ベースのタスクが活動の主流となる「ビジネスおよびプロフェッショナルサービス業界」は、アメリカのGDPの13%を占め、ソフトウェア業界の約10倍の経済規模を持つ。加えて他の業界においても、この種のタスクは業務のある程度の割合を占める。 つまり、バーティカルAIは、既存のSaaSを大きく凌駕した事業機会を産み出す可能性が高く、既存SaaS企業の時価総額3,000億ドルの、少なくとも10倍の経済規模になると予測されているのだ。
バーティカルAIの3つのビジネスモデル
バーティカルAIを巡っては、現在3つのビジネスモデルが台頭している。AIコパイロット、AIエージェント、AI対応サービスだ。 まずAIコパイロットはLLMを活用してタスクを自動化することで、作業者の業務効率を高める。例えばSixfoldは、保険業者のデータ分析とリスク把握をサポートする。Copilot=副操縦士の名の通り、コパイロットモデルでは、AIアプリケーションが人間と並んで存在し、ユーザーの業務を支援するイメージだ。 一方AIエージェントは、ワークフローを完全に自動化し、ユーザーの業務を代替する。例えばSlangAIはレストラン業界に特化した音声AIエージェントで、予約や問い合わせへの回答などインバウンドコールを自動処理する。このようにAIエージェントは、アウトバウンドセールスやインバウンドコールの受付など、企業内の特定の機能に重点をおいてワークし始めている。 そしてAI対応サービスは、会計、法務、医療費請求など、これまで外部にアウトソーシングされてきた分野をターゲットとする。これらの分野は人手がかかり、従来のテクノロジービジネスに比べて利益率も低いため、規模拡大や差別化が難しかった。そこをAIソフトウェアを使って自動化し、より安価でより迅速かつ優れたサービスを提供することを目指している。