「ケガだけが心配」の声も…DeNAオースティンが全力プレーをやめない深いワケ 本人が明かす「監督に胸ぐらを掴まれた日」「甲子園が大好きなんだ」
一番の支えは、やはり妻の存在でした
つらい時間ほど、人間性が試される。オースティンは、自分がコントロールできないことに対して、あまり深く悩まないように意識づけをするようになったという。その手助けをしてくれたのは、家族や仲間たちだ。オースティンは柔らかい口調で言う。 「一番の支えは、やはり妻の存在でした。彼女自身、非常にポジティブな人間で、近くにいるときは相談に乗ってくれましたし、日本にいないときは動画を送ってくれて僕を励ましてくれました。あとはチームメイトや球団スタッフからも元気づけられましたし、とくに後藤通訳の友人のようなサポートには本当に感謝しているんです」 人が人を支え共生する。人間はひとりでは生きてはいけない。改めて後藤氏は、オースティンの人間性について次のように語る。 「適切な表現かどうかわからないのですが、彼は古き良きメジャーリーガーといった感じなんです。プレーする姿勢はもちろん、自分がキャリア的にも上であることを理解して、若手選手たちに気を遣ってあげる。例えば森(敬斗)や松尾(汐恩)、最近では(ジョフレック・)ディアスとか、一軍に上がってきた選手に対して、いろいろ親身になってアドバイスをしていますね」
若い選手にも気を配る理由
これは今現在のことだけではなく、過去2シーズン、DOCK(ファーム施設)で苦しい時間を過ごしているときも同様に、親身なアドバイスに加え、若い選手たちの誕生日があればケーキを準備したり、プレゼントをあげたりしていた。 後藤氏はつづける。 「いわゆる助っ人外国人選手がやらなくてもいいようなことを、彼は自分の役割と考え、率先してやっているんです。本当に素晴らしいことですし、自分がやってもらったことを次の世代に繋げたいという思いが強いようですね」 もはやチームの精神的支柱。そのことについて尋ねると、32歳のオースティンはちょっとだけ恥ずかしそうな表情をして答えた。 「まあ、もうベテランの立場だから若手選手を気にかけるようにしているだけなんだ。自分に話しかけやすい環境作りを意識してコミュニケーションをとってきて、最近は野球のことはもちろん、それ以外のことも訊きにきてくれるようになったよ。若い選手が一軍の舞台で萎縮することなく伸び伸びとプレーできることのが、チームにとっても理想だからね」 この人間とチームに目を向けたビッグハート。オースティン自身、ハイスクールを卒業し、19歳でプロとなり歩んできた道のりがあるだけに、若手選手の頑張りには必然的に手を貸したくなる。 「僕も、マイナーから上へチャレンジしているティーンエイジャーのとき、コーチやチームメイトに支えられた経験があるし、そういう出会いには今でも感謝しているんだよ」