かたくなに禁止するのは時代遅れ…労働者にも企業にもメリットがある「副業」「兼業」の注意点
「副業禁止」を就業規則に定めている会社で、もし副業をしたいという社員があらわれたら……。前編記事〈「副業できないのなら退職します」26歳塾講師の訴えに困惑…会社は「副業禁止」を貫くべきか〉では学習塾の事例をもとに、労働時間以外の時間をどう使うかは基本的に労働者の自由で、副業を禁止にするには相当の理由が必要になることを確認した。 【マンガ】38歳会社員が絶句…2500万の「軽井沢の別荘」を買ったら思わぬ出費 それでは副業、あるいは兼業を解禁し、企業が運用する際にはどのようなことを注意すればよいのか。社会保険労務士の上岡ひとみ氏が解説する。
企業による副業制限が許されるケース
副業・兼業など多様な働き方を希望する者は年々増加傾向にあります。厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の中で、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等を示し、企業も働く方も安心して副業・兼業に取り組むことができる環境づくりを進めています。 今回は副業・兼業のメリットや運用する際の留意点などを確認していきます。 前提として、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、企業においてそれを制限することは許されません。過去の裁判例に示された、企業による制限が許される例外をあげると次の通りです。 (1)労務提供上の支障がある場合 (2)業務上の秘密が漏洩する場合 (3)競業により自社の利益が害される場合 (4)自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合 副業をした従業員を就業規則違反として懲戒解雇にした事業主に対し、「本業への支障はなかった」「副業は使用者の権限が及ばない労働者の私生活における行為である」と認め、懲戒解雇を無効とした裁判例があります。副業を禁止にするには相当の理由が必要であり、また裁判になれば敗訴するリスクを負います。また頑なに副業・兼業を禁止する会社の姿勢は、働き方の多様化が進む現代において、社会的な評価にも影響がありそうです。 そういった点を踏まえて、副業・兼業を禁止している企業については、原則副業・兼業を認める方向で、就業規則などの見直しや労働者が副業・兼業を行える環境の整備が必要といえます。 また、労働者側も就業規則に副業禁止とある場合に、上記(1)~(4)に当てはまる副業を行ったとなると懲戒処分の対象となることがあります。合理的な理由で一定の範囲内について副業禁止とする就業規則は、問題なく法的効果を持つためです。 副業をする前に、就業規則で副業についてどのような定めがあるか、また検討している副業が会社にとって許容できる内容であるかなど、必ず確認するようにしましょう。