和田秀樹 仕事から退けば同僚も部下も消え、妻が亡くなれば…「ひとりが当たり前」と誰もが気づいた現代における<幸福>とは?
◆節制しても寿命が一年延びるだけ、好きに暮らすのが体にいい 私は長年、高齢者医療に携わってきました。その感覚からすると、60代以降に色々な節制を心がけたとしても、寿命はせいぜい85歳が86歳になるという程度でしょう。 たった1~2年寿命を延ばすために、ストレスの多い節制した暮らしを送ることに納得できるでしょうか。私はできません。 こんな例があります。80代のAさんは、タバコが大好きでしたが、82歳で肺ガンの宣告を受け、家族にタバコを禁止されました。 それでも、Aさんは「どうせガンで死ぬんだから」とまた、タバコを吸い始めました。それから実に10年、毎日「うめえなぁ」とタバコを吸い続け、最後は肺ガンではなくクモ膜下出血で亡くなったのです。 自分の楽しみを優先したおかげで、Aさんの免疫機能は上がり、ガンの進行が遅くなったのでしょう。これほど、自由がもたらす精神的安定は、健康に直結しているものなのです。
◆「快」 脳、特に元気を司る前頭葉は新しい刺激や「快」を得られる体験で活性化します。ガマンや節制を強いられるストイックな暮らしには、刺激も喜びも快もありません。 誰かと一緒に暮らしていたら、やりたいことをせず、ガマンしたまま、ヨボヨボの老人になっていくだけです。そんな晩年では必ず後悔します。 死ぬまでには、まだ20年、30年。あるいはそれ以上の時間が残されています。 たとえ1~2年早く死ぬことになっても、残りの人生、自分の好きなように生活できたほうが、よほど健康にいいのです。 ましてや、ガマンばかりして、うつ病になって、自殺でもしようものなら、寿命はそこで一気に止まってしまうのです。 健康で安らかに暮らしていくためには、ストレスを取り除くことが大前提です。 ひとりへの恐れは誰にでもあると思いますが「好きなように生きたい」「煩わしい人間関係から自由になりたい」「ありのままの自分でいたい」という願望を叶えることが、健康への最大の投資になるのです。 ※本稿は、『死ぬまでひとり暮らし ─ 死ぬときに後悔しないために読む本』(興陽館)の一部を再編集したものです。
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