ネットにあふれるクルド人ヘイトの異常さ 差別される側の視点に立ってみたことありますか?「一部の問題で全体を判断しないで」
2023年の夏、SNS上にこんな投稿があふれた。 【写真】クルド人を絶望の淵に…重なる苦難
「クルド人集団が暴れて埼玉県民が困っている」 「クルド人は中東に帰れ」 トルコから日本に来た少数民族クルド人が非難されている。言葉だけでなく、動画も一気に拡散した。内容は車の危険運転やナンパ、騒音と説明されている。 きっかけになったのは、この年の7月に埼玉県川口市で起きた事件だ。トルコ国籍の男性が頭部などを切りつけられた。逮捕されたのは同じトルコ国籍の男性。原因は男女間のトラブルだった。関与したとして逮捕された人は計7人に上る。警察は「トルコ国籍」とだけ発表したが、関係者によると、7人はいずれもクルド人だった。 事件後には、クルド人とみられる約100人が集まる騒ぎも起きた。場所は被害者が運ばれた病院前。被害者の親族など双方の関係者とみられる。ここでも逮捕者が出ている。警戒した警察官に対する公務執行妨害容疑だった。 この事件に端を発するネット上の投稿には、クルドという民族への憎しみを隠さないものも少なくない。排外主義に基づいた「ヘイト」と呼ばれる行動だ。一部の人による事件で民族全体を語っていいのだろうか。私は大学院時代に約半年間埼玉県蕨市に住み、その後も就職するまでオンラインの日本語教室などを通して約2年間、在日クルド人と関わってきた。差別にさらされる彼らに今の思いを聞くと、苦悩する声が漏れた。「ごく一部の問題で、クルド全体を判断しないでほしい」(共同通信=赤坂知美)
▽「クルドカー」の青年、悪ぶっているけれど… SNS上には、深夜に川口市内を走る車の映像があふれている。マナーの悪いクルド人が乗っているとして、「クルドカー」と揶揄される。市内で起きる騒音トラブルやポイ捨てにも結びつけられている。 実情はどうなのだろう。車でよく周辺を走るというクルドの青年に取材を申し込んだ。 12月のある日、黒のクラウンが待ち合わせ場所に現れた。運転席から現れたアリさん(仮名)は、腕や首に入れ墨がある。眉にはそり込みを入れている。つい身構えてしまう風貌だ。 しかし、そのいかつさとは裏腹に、「恥ずかしいから、カフェに入らず車で話そう」とシャイな物言い。同席してくれたクルド人支援団体のメンバーと後部座席に乗り込んだ。緊張をほぐそうと「車、かっこいいね」と声をかけた。すると彼は、少しうれしそうに答えた。 「これ、中古だから50万円だったんだよ。改造で100万円ぐらいになったけど」
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