サイン盗みアストロズ・オーナーの“自爆発言”巡り全米騒然。ヤ軍チャップマンも「賛同できない」と批判と怒り
サイン盗み問題で球界を揺るがしたアストロズのジム・クレイン・オーナー、アレックス・ブレグマン、ホセ・アルトゥーベ、ダスティ・ベイカー新監督が13日(日本時間14日)、米国フロリダの春季キャンプ地で謝罪会見を行った。だが、クレイン・オーナーは「私たちの見解では、これ(サイン盗み)が試合に影響したとは思わない。アストロズはいいチームだった。だから(17年の)ワールドシリーズで優勝したのだ」と、反省や謝罪どころか、まさかの自爆発言。全米のメディアを巻き込んで新たな批判の声が起きて波紋を広げた。 またクレイン・オーナーは「選手たちは罰せられるべきではないという見解に賛成だ。彼らはリーダーたちから適切な指導を受けられなかっただけ」と、解雇されたヒンチ前監督に責任を押し付け「私が責任を負うべきだとも思わない。大リーグの調査報告書も、私は何も知らなかったと記していた」と、自らに責任がないと主張した。 ロサンゼルスタイムズ紙は「アストロズオーナーのクレイン氏のサイン盗みに対する心無い謝罪は、ばかばかしいものだった」との見出しで謝罪会見を批判した。 「コミッショナーの報告書を見る限り、それが空想でなければ、多くの疑いがあり、アストロズによる電子機器を利用したサイン盗みのシステムの多くに疑惑も残る。罪を認める木曜日の会見は、アストロズの不正行為の規模を明かすことはなく、クレイン氏がどんな人物かをさらけだすことになった」と紹介。「クレイン氏の態度は、望むものを手に入れることに慣れている人のそれだった。そしてここでの球団オーナー(のクレイン氏)の望みは、彼のチームが不正行為をした責任を一切取らず、唯一の優勝を守ることだった」と強烈に批判した。
「うわべだけの不真面目な謝罪」
フォーブス誌も「最悪の記者会見。不正スキャンダルに対し、うわべだけの不真面目な謝罪」と非難した。 「彼のチームによる高度なサイン盗み方法がもたらした結果に関するクレイン氏の意見の急変は、木曜日に行われた記者会見で、最も耐えがたく、矛盾した瞬間だった」と皮肉った。 記事は「アストロズのロゴの入ったゴルフポロで着席したクレイン氏は、不正スキャンダルが明らかになってから初めてとなるメディアからの質問をうまくかわしていた。選手のアレックス・ブレグマンと、ホセ・アルトゥーベはともに話したが、合わせて90秒以内で、質問を何も受けつけなかった。恥ずかしいことに組織は2週間前に雇ったダスティ・ベイカー新監督を引っ張り出した。彼はその場にずっと着席し、関わっていない不正行為について質問に答えていた」と記者会見の様子を伝えた。 「この年代の野球界最大となる不正スキャンダルだというのにクレイン氏の会見はうわべだけの不真面目な謝罪だった」と、クレイン・オーナーの発言を批判した。 ニューヨーク・デイリーニューズ紙は、ヤンキースのアーロン・ブーン監督の批判意見と守護神、チャップマンのコメントを軸に「ヤンキースはアストロズの謝罪に何ひとつ共感しなかった」との批判的記事を展開した。 記事は、「アストロズのクレイン・オーナーの表面的な謝罪と傲慢な発言は野球界に全く通用しなかった。クレイン氏は、アストロズの不正なサイン盗み行為が、試合の数々や球団唯一となる2017年のワールドシリーズ制覇に影響を与えたことを否定した。だが、2017年のアメリカン・リーグ優勝決定シリーズで第7戦までもつれてアストロズに敗れたヤンキースは、その意見に賛成していない」と伝えた。 同記事によると、2019年にアストロズのワールドシリーズ進出を決めるサヨナラ本塁打をホセ・アルトゥーベに許したアロルディス・チャップマンは、(ブザー疑惑について聞かれると)ただ首を振った。彼はアルトゥーベがホームに生還した後、チームメートに祝福の中で「ジャージを破らないように伝えていた」という証拠のビデオを見たそうで、チャップマンは「アルトゥーベの行為は怪しい」と話したという。 またアストロズ遊撃手のカルロス・コレアは、アストロズが打者に変化球を伝えるためにゴミ箱を叩くことから、ジャージの下にブザーを取り付けるまでに至ったとの疑いに対して否定的な意見を口にしているが、ブーン監督は「コレアの主張やアストロズのAJ・ヒンチ前監督が2019年にブザーが使われたと気づかなかったとした発言は、何も解決を呼ばない」と批判した。 またチャップマンは「2017年のア・リーグ優勝決定シリーズの第7戦は、(サイン盗みがなければ)違うものになっていたかもしれない」と語り、クレイン氏のコメントを耳にしたときに、こう主張した。 「(クレイン氏の意見には)賛同できない。(サインを盗んだという)有利な点があれば、より強いチームになるのは明らかなこと」 全米に大きな波紋を広げたアストロズのサイン盗み問題は、オーナーの”自爆発言”を巡ってさらなる物議を生み、いっこうに収束に向かいそうにない。