背伸びした学費、当て込んだ仕事がゼロになり慌ててアルバイト──親子芸人「完熟フレッシュ」の幸せコンビ計画 #令和の親 #令和の子
筆者の職業は漫才師。 コンビ名を髭男爵という。 妻と結婚したのが2011年の8月。 ほどなく長女を授かり、そこへ次女が加わって4年ほどが経った。 2児の父親として精いっぱいやってきたつもりだが、 「あんな頭ごなしに叱らなきゃよかった……」 といった後悔は枚挙にいとまがない。 中でも長女(現在小5)に対して10年もの間、自分の職業を「フレキシブルに働くサラリーマン」と説明してきたことについては未だ心の整理はつかぬ。 偽った理由は「一発屋」。 不甲斐ない親のせいで、 「お前のとーちゃん売れてないー!」 などと娘の学校生活に影を落としてはと危惧した次第である。 一生隠し通すわけにもいかぬので、 「実はパパ、髭男爵っていうんだよ」 と腹をくくったのが、昨年の春先。 そんな筆者にとって、「我が子を相方にした」男、「完熟フレッシュ」池田の存在は異端……親子に話を伺った。(取材・文:山田ルイ53世/写真:石橋俊治/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
父一人娘一人の池田さん家(ち)
「このバツイチ!」 「この人、元・売れない芸人だったんです」 「ダラダラお笑い続けるから、ママが男作って出て行ったんですよ?」 と容赦のないツッコミを浴びせる小学生の娘に、 「ちょっと言い過ぎじゃない?」 と防戦一方の父。 2016年のM-1グランプリ、1回戦で繰り広げられた、「完熟フレッシュ」の漫才である。 『じゃりン子チエ』や『クレヨンしんちゃん』を彷彿とさせる小気味の良い掛け合いを武器に、結成ホヤホヤの親子コンビは、この年は3回戦、翌2017年は準々決勝までコマを進め、「ベストアマチュア賞」にも輝いた。 2018年の正月は、若手の登竜門「ぐるナイおもしろ荘」(日テレ)に出演し、ワタナベエンターテインメントへ所属。 人気番組に次々と顔を出し、飛躍の年となった。 彼らの強みとなったのは「親子」。 それも「子育て真っ最中」だった点だろう。 世間様は「大家族」「散らかった部屋」「はじめてのおつかい」と、よそのお宅をのぞき見するのが大好物。 娘が12歳で父はシングルファーザーの「池田さん家(ち)」が、人々の興味を引くコンテンツと化したのも自然の流れだった。