背伸びした学費、当て込んだ仕事がゼロになり慌ててアルバイト──親子芸人「完熟フレッシュ」の幸せコンビ計画 #令和の親 #令和の子
SNSの誹謗中傷にさらされ
夢を掴んだ親子を、悪夢が襲う。 「テレビに出たら、SNSとかで『生意気だ!』と娘が叩かれて」 心底参ったと憤るが、池田にも責はあろう。 自らが半生を懸けて貯め込んだ「負け」を、娘の口を借りて放つのが、「完熟フレッシュ」の真骨頂。 いわば、自虐の「鵜飼い」、もとい、「迂回」である。 レイラが露悪的に映るリスクは予見できたのではという筆者に、 「コッチが言わせてるのに、申し訳なくて」 と池田も頷き、罪悪感を吐露した。 唯一の救いは、 「何か言ってるな、くらいにしか……」 とネット世代ならではのスルースキルを娘が備えていたことだろう。
思い出の場所、だけど
最後に、幸せだったかと問うてみた。 「ええ、幸せだったと思います」 と微笑むレイラに、 (よかった……) と安堵したが、 「父と2人暮らしになってからのことは、『前ココ来たね!?』とか言われても、あんまり覚えてなくて。 つらかったなって気持ちは断片的に残ってるけど、小3から高1の途中ぐらいまでの記憶がほとんどない。 母がいた小2までは、しょうもないことまで覚えてるのに……」 と続ける彼女にハッと息を呑む。 この日初めて年相応の脆さを垣間見たような気がしたからだ。 「お仕事の記憶はある。 でもプライベートで、父とどこ行った、何をしたとかはあまり……」 父は知っているのだろうか。 「……知らないです」 幸か不幸かこのインタビュー、親子個別で行っていた。 池田はさぞかし悲しむだろうとため息を吐く筆者に、 「だから言わない」 とレイラ。 余計な一言を反省するコチラの心中を察してか、 「父がキライとかじゃない。 新しい経験も沢山させてもらったし。 環境の変化に追い付けてなかっただけ。 自覚がなかっただけです」 ふと見やれば、もうしっかり者の顔に戻っていた。
コンビの解散は
「この前、特番のロケで海外に行って……」 「初めての主演のお仕事が……」 と嬉しそうなレイラ。 一方父は、お留守番が増えた。 「完熟フレッシュ」は、いつまで続けるのかとの質問には、 「多分あっちが死ぬまで」 と茶目っ気たっぷり。 「お父さん、やめたがらないと思う。すごく楽しそうなんで。じゃあもうそれでいいかなって」 と微笑む18歳に、目頭が熱くなった。 親子コンビ、「完熟フレッシュ」。 完熟担当は娘、フレッシュも娘、父は……ただの父だ。 池田にとって、漫才も子育ての一環。 娘に寄り添う姿は、もはや、参観日である。 まあ心配は無用。 そもそも、親子は解散など出来ない。