「叱るのはかわいそう」という風潮に待った!「叱らない」が実は子どもを苦しめる?思い通りにいかない経験が「こころの成熟」に必要なわけとは
「世界からの押し返し」が少ない子どもは不適応になりやすい
学校は多くの子どもたちにとって「思い通りにならない場所」です。自分たちの行動は校則で制限されますし、同年代の子ども達の中で好き勝手ばかりはできませんし、定められた学習をすることになります。こうした学校の在り方こそが不登校の原因であると考える人もいるようですが、まだまだ幼い子どもたちは、学校という「思い通りにならない場所」での体験を通して、不快感を納め、環境との調和を経験していくという面も忘れてはなりません。 子どもが「社会的な存在として成長する」ということを目指すのであれば、家庭や学校で経験する「思い通りにならない経験」の価値も理解しておく必要があります。
「無理せず休ませる」だけでは解決しない、不登校・不適応へのカウンセリング事例を多数紹介
『「叱らない」が子どもを苦しめる』(著/藪下遊・高坂康雅、筑摩書房 定価1,012円) 現代の子どもたちの不適応や不登校に多いしくみを描き出した『「叱らない」が子どもを苦しめる』。本書では、子どもを褒めて伸ばしているつもりの子育てが、「いつの間にか“子どもの問題を指摘しない」「ネガティブなところを示さない」という形に変質してしまっていることがあると著者はいいます。 従来の考え方やアプローチとは異なるところもありながら、現役スクールカウンセラーである著者自身のカウンセリング経験にもどづいた事例が多数紹介されています。「叱る」こと、「押し返す」ことの意義をいまいちど考えることのできる一冊です。 ※こちらの記事は、『「叱らない」が子どもを苦しめる』の内容の一部を抜粋し、再編集したものです。 【著者】 藪下遊|臨床心理士・公認心理士・スクールカウンセラー 藪下 遊(やぶした・ゆう):1982年生まれ。仁愛大学大学院人間学研究科修了。東亜大学大学院総合学術研究科中退。博士(臨床心理学)。仁愛大学人間学部助手、東亜大学大学院人間学研究科准教授等を経て、現在は福井県スクールカウンセラーおよび石川県スクールカウンセラー、各市でのいじめ第三者委員会等を務める。 【著者】 髙坂康雅|和光大学現代人間学部教授 髙坂 康雅(こうさか・やすまさ):1977年生まれ。筑波大学大学院人間総合科学研究科心理学専攻修了。現在は和光大学現代人間学部教授。主な著書に『恋愛心理学特論――恋愛する青年/しない青年の読み解き方』(福村出版)『深掘り!関係行政論 教育分野 公認心理師必携』(北大路書房)『公認心理試験対策総ざらい 実力はかる5肢選択問題360』(福村出版)『本番さながら!公認心理師試験予想問題 厳選200』(メディカ出版)等がある。
取材・文/HugKum編集部