「叱るのはかわいそう」という風潮に待った!「叱らない」が実は子どもを苦しめる?思い通りにいかない経験が「こころの成熟」に必要なわけとは
「思い通りにならないことを受け容れる」ために必要な経験とは?
現在、不登校の子どもは小中学校合わせて約30万人といわれています。「無理せず休ませる」というサポートが主流ですが、それだけでは改善しない事例も増えていると、現役のスクールカウンセラー薮下遊さんは警鐘を鳴らします。「叱ること」「思い通りにならないことを受け入れる」経験をすることの意義について一石を投じている薮下さんの著書『「叱らない」が子どもを苦しめる』(筑摩書房)から、なぜ叱ることが必要なのか、くわしくご紹介します。 ■1歳までは、親から大切にされることで安心できる実感を育む 子どもが生まれてから1歳くらいまでは、外の世界とあまり積極的に関わることはせず、親子はべったりとした関係性の中で過ごすことになります。この間、子どもは親から大切にされることで基本的信頼感 (世界に対して安心できるという実感)を育むと同時に、子どもの行い一つひとつに親が反応し、対応することで能動的な力の感覚(積極的に世界に働きかけていく力。自信の萌芽でもある)を身に付けていきます。 ■1歳すぎからは外の世界から押し返される経験をする 子どもが1歳を過ぎるころには、歩けるようになるなどの身体的発達が見られるようになります。こうした身体的発達に、基本的信頼感や能動性の高まりが加わることで、 「安全な親から離れて、外の世界に働きかけても大丈夫」という安心感をもって「外の世界」と関わるようになります。 このように1歳を過ぎたあたりから、子どもは「外の世界」と本格的に関わり始めるわけですが、まだまだ分別がつかない子どもですから、やってはいけないことをたくさんやってしまいます。回っている扇風機に指を突っ込もうとしたり、階段から落ちそうになったり、高いところに登ろうとしたり、とにかく親がハラハラしたり、びっくりするようなことを平気でします。 こういうことを子どもがやりそうになったときに、親を中心とした「外の世界」に求められるのは、子どもの行動に対して適切に「押し返す」ということです。この「世界から押し返される」とは簡単に言えば、叱られる、止められる、諫められるといったことになります。