この「孫育て」、いつまで続くのか…年金月25万円・平穏に暮らす夫婦の生活が“娘一家の引越し”で一変。疲労困憊の日々に「こんな老後のはずでは」【CFPの助言】
日常生活と経済的な援助は「自分を最優先」で
こうしたAさん夫妻のようなケースは近年増えています。子どもや孫をサポートするあまり、自身の健康を損ねたり、経済的に苦しくなったりするケースは少なくありません。 援助を断ることへの罪悪感がそうさせるのかもしれません。しかし、自身が健康で経済的な余裕がなければ援助はできません。子ども側も親に無理をさせたいとは思っていないはずです。 子ども世帯への援助は、「日常生活の援助」「経済的な援助」の2つの面に分けて、それぞれ無理のなくできる範囲を決める必要があります。 まずは、子ども世帯に、健康面で不安があること、経済的に難しいことを率直に伝えたうえで、孫の世話をする時間帯、あるいは時期などを具体的に決めましょう。それ以外の時間は、基本的に面倒を見ないようにします。臨機応変に対応していては、これまでと変わらないかもしれません。あらかじめ時間を決めておくことがポイントです。 子ども世帯の方で、家事代行などのサービスを利用するのも1つの手です。2024年現在、経済産業省が主導する「家事支援サービス福利厚生導入実証事業」では、中小企業の従業員に対する福利厚生として、家事代行サービス利用料の2/3が国が負担する取り組みもあります。 少子化対策として、共働きや子育て世帯への支援は今後も拡充される可能性があります。積極的に公的な支援も活用すると良いでしょう。
老後資金 残しておく金額の目安は…
つづいて、援助する金額の予算を決めます。退職したばかりの頃は、退職金や貯蓄に余裕があり、あれこれと援助しがちになるかもしれません。しかし、実際は現役時代よりも収入は減っており、より計画的にお金を使う必要があります。 また、Aさん夫妻の場合は、今後孫が増える可能性にも留意しておきましょう。1人目はあれだけ援助が手厚かったのに……と不公平に感じる子どももいるかもしれません。 原則として日常の生活費は援助せず、入学式や卒業式、結婚式など節目となる特別な行事の際にお祝いを渡すといった形で援助する方法がおすすめです。そして、現在Aさん夫妻が負担している孫の食費は、子ども世帯に負担してもらいましょう。子どもは何年も自分の家で無料でご飯を食べてきました。孫の食費に対しても、同じ感覚でいるのかもしれません。 具体的な援助の金額は、現在の預貯金や資産から、自分たちが将来必要となるであろうお金を差し引いたうえで、余裕を持って決めましょう。 自分たちが使うお金には、日常生活費の他に、車・家電の買い替え、家のリフォーム、旅行などの「特別な支出」、自身の「医療・介護費用」の2つが挙げられます。特別な支出に関しても、事前に予算を決めておき、その範囲内で行いたいところです。 予算を決める際は、月々の負担額に計算して、考えてみるのも一案です。たとえば、年1回程度の頻度で訪れるイベントであれば、12ヵ月で割り、月々の負担額にして考えてみる。家電の買い替えであれば、5年間利用すると仮定し、月々の負担額を考えてみる…といった具合ですね。 医療や介護費用は人によって異なりますが、各資料の平均額からざっくり予測してみます。厚生労働省の「生涯医療費」(※1)によると、65歳から100歳までの医療費の合計は1,286万円でした。75歳以上になると多くの方は自己負担割合が1割になりますので、65-69歳までは3割 ・70歳-74歳までは2割負担・75歳以降は1割負担で試算すると、65歳以降の自己負担額は約232万円となります。 介護費用に関しては、生命保険文化センターの資料(※3 )を参照します。同資料によると、毎月の介護費用の平均は8万3,000円、介護の平均期間は61.1ヵ月でした。加えて、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用が平均74万円かかっています。 単純に計算すると、(8万3,000円×61.1ヵ月)+74万円=581万1,300円。あくまで平均ですが、1人あたりの介護費用は約600万円弱となります。それぞれの医療と介護の費用は合わせて、おおむね1人あたり832万円を目処に用意しておくと良いでしょう。 <参照> (※1) 厚生労働省「生涯医療費」2022年度 (※2)70歳以上で年収156万円~約370万円の人の場合 (※3 )生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」2021年度
【関連記事】
- 年金14万円・80代の母、死去…50代独身長男、数年ぶりの実家訪問で絶句した「まさかの光景」
- 「親が亡くなったら、真っ先にコンビニへ走る」が新常識!相続手続きで困らないためにやるべき、たった一つのこと【税理士が解説】
- 「絶対に来ないで」年金20万円、都内高級タワマンに1人で住む85歳母が、55歳娘を頑なに家へ入れない衝撃理由…強行突破の先の〈目を疑う光景〉【CFPが解説】
- 「お金貸して…」年金18万円、貯金3,000万円の70代タワマン妻が友人に“借金”し続ける理由【FPが解説】
- 1億円貯めて15年前にFIREした「68歳・貯金好きの元高収入サラリーマン」…「年金」を受給し始めたいま、自らの選択を大後悔しているワケ【CFPの助言】