三ツ沢で奪った「聖地初ゴール」は7年間への感謝の一撃!横浜FCユースFW庄司啓太郎は自らが叩き出す得点でプレミアの頂へと上り詰める!
[9.23 プレミアリーグEAST第15節 横浜FCユース 3-3 FC東京U-18 ニッパツ三ツ沢球技場] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 7年間を過ごしてきたアカデミーラストイヤーとなる、今シーズン最後の“三ツ沢”開催。もちろんどんな試合でもゴールを狙ってはいるけれど、小さい頃から憧れ続けてきたこのピッチで沈めた1点は、やっぱり特別過ぎた。 「自分が三ツ沢のピッチに立つのは、天皇杯の試合も含めて4試合目なんですけど、ここでゴールを決められたというのは自分の中で本当に嬉しいことなので、またここに帰ってきて、また点を決められたらなと思います。メッチャ嬉しかったです!」。 プレミアリーグEASTの首位に堂々と立つ横浜FCユース(神奈川)の9番を託されたセンターフォワード。FW庄司啓太郎(3年=横浜FCジュニアユース出身)が兼ね備えている得点への強い意欲と仲間を助ける献身性は、このチームを常に力強く支えている。 プレミアリーグEAST第15節。横浜FCユースがFC東京U-18(東京)と対峙する一戦の舞台は、ニッパツ三ツ沢球技場。今シーズンからリーグ戦の会場として使用されている“聖地”でプレーすることは、スクールからこのクラブのエンブレムを纏ってきた庄司にとっても、いつだってスペシャルな体験だ。 本人も語っていたように、庄司が三ツ沢のピッチに立つのはこれが4試合目。リーグ戦の青森山田高(青森)戦と流通経済大柏高(千葉)戦に加え、6月の天皇杯2回戦・ヴァンラーレ八戸戦でも延長前半から出場機会を得たが、まだゴールを奪うまでには至っていなかった。 2024年のユースが戦う公式戦としては、この日が三ツ沢のラストゲーム。自ずと気合は入る。それはチームも同様。立ち上がりからゲームリズムを掴んだ横浜FCユースが強める攻勢。そして、29分。9番に絶好の得点機が巡ってくる。 右サイドでFW前田勘太朗(2年)がボールを奪い返し、MF管野心人(2年)は中央へ。上がってきたDF小漉康太(3年)がスルーパスを通すと、チェックの動きから抜け出した庄司のシュートは、左スミのゴールネットへゆっくりと転がり込む。 「自分はちょっと足元、足元となっていた中で、最近は背後に抜ける動きをコーチから言われていて、ずっとやっていたチェックの動きで決められたので、自分が狙っている形ではありました。キーパーがニアに寄っているのはわかりました。自分でもよくわからないですけど、なんか冷静でしたね(笑)」。 ついに生まれた自身初となる三ツ沢での得点。チームメイトたちも我先にと駆け寄ってくる。グラウンドの上で弾けた歓喜。7年間の感謝を込めた一撃。庄司のストライカーらしいゴールが、横浜FCユースに1点のリードをもたらす。 そのプレースタイルには、チームや仲間に対する献身的な姿勢が滲む。前後左右に幅広く動いてボールを引き出したかと思えば、時には中盤の深い位置まで下がって、守備に奔走することも。「4-4-2のシステムから、4-1-4-1みたいに可変することもある中で、自分が少し落ちてチームを助ける動きをしたり、逆に自分が背後を取って勘太朗が落ちることもありますし、自分は周囲を助ける役割を担いたいなと思っています」。その立ち回り、実に効果的。ここまで全試合にスタメン起用されているあたりに、和田拓三監督からの信頼も透けて見える。 この日の試合は不思議な展開をたどる。横浜FCユースが一方的に攻めていた前半を経て、ハーフタイムを挟むと流れは一変。今度はFC東京U-18が3点を奪い、逆転してしまう。小さくないビハインドを負う中で、庄司は後半38分に交代でベンチへと下がったが、ホームチームは折れなかった。 45+1分にFW前田勘太朗(2年)が、45+4分にMF中台翔太(3年)が続けてゴール。「さすがにビックリしましたね」と庄司も笑った横浜FCユースは、土壇場で追い付く『三ツ沢の奇跡』を巻き起こし、勝点1を粘り強く引き寄せた。 プレミアリーグWESTで戦っていた昨季の庄司は、リーグ戦17試合に出場して1得点。シーズン途中からはシャドーのポジションを任されることも増え、攻守に献身的なプレーを続けていたものの、望んだような得点数を積み上げることは叶わなかった。 「今年はゴールを獲る年にしようと自分でも思っていました」と確固たる決意を携えて迎えた今シーズンのプレミアでは、ここまで15試合に出場して6ゴールをマーク。「ゴール前に入っていく回数が去年に比べて増えて、シュートチャンスも増えた中で、そこでしっかり決められているのが得点数に繋がっていると思います」と自己評価しながら、「でも、決められていないシュートも多いので、もっと決められるようにしたいと思います」と続けるあたりに、結果に対する貪欲な姿勢も窺える。 どうしても意識せざるを得ないのは、前線でコンビを組む“パートナー”の存在だ。2トップの一角に入ることの多い前田は、ここまでのリーグ戦で庄司より1点多い7ゴールを記録。さらに8月末にはプロ契約の締結もクラブから発表されるなど、今まで以上に周囲の注目を集めている。 「自分にとって勘太朗はライバルであって、仲間でもあるんですけど、アイツが点を獲ったらやっぱり悔しいですね。でも、今は彼の方が立ち位置としても上を行っているので、自分も追い付けるように、追い越せるように、また切磋琢磨していきたいと思います」。1歳年下の“ライバル”と競い合う日常が、庄司の意識を引き上げていることも間違いない。 7試合を残した段階で、プレミアリーグでの順位は首位。そろそろタイトルを明確に意識する時期へ入ってきているが、そのことはもちろん理解している。よりチームを勝利に導く得点が求められるここからの時間に、庄司は改めて想いを馳せ、こう言葉を紡ぐ。 「今までスクール1年、ジュニアユース3年、ユース3年とこのクラブにいた中で、寂しい想いもありますし、やっぱり最後の年でプレミア優勝という結果で、しっかりクラブに恩返ししたいですね。個人としてはまだ満足はできていないです。自分がもっともっとゴールを決めたらチームも勝てると思うので、まずは二桁得点を目指して頑張りたいです」。 さまざまな経験を味わってきた、7年間に及ぶアカデミー生活の集大成。見据えるのは目の前にそびえ立つ高校年代最高峰の頂。横浜FCユースをしなやかに牽引するナンバー9。庄司啓太郎がチームと自身の結果を全力で追い求めた先には、きっとまだ見ぬ景色が待っている。 (取材・文 土屋雅史)