試合開催の度に各クラブが赤字に、WEリーグ改革のとき 北川信行の女子サッカー通信
2021年にスタートし、3季目を終えたサッカー女子プロ、WEリーグが曲がり角を迎えている。26日に開かれた理事会後のオンライン記者会見では、3季目を「全体的な競技力向上、より拮抗したリーグを目指すとともに、興行規模の拡大を図る各種施策を実施した」などと総括。アジア女子チャンピオンズリーグ(AWCL)もスタートする4季目に向けては、課題となっていた冠スポンサーが見つかったことが明らかにされるとともに、競技力向上施策の本格化や、戦略的な営業活動などに取り組む方針が示された。だが、加盟クラブからは選手の海外流出や公式戦の続行不能を危ぶむ声が噴出している。今は危機意識を共有し、足元を見つめ直すタイミングではないか。将来にわたって持続可能なリーグとなるための抜本的な改革が求められているように思う。 ■1試合100万円超の赤字 リーグ側が強調するように、WEリーグ発足によって日本の女子サッカーの競技レベルが向上したのは間違いない。女子サッカー人気が急速に高まっている欧米との比較でも、プレー強度の高さや、選手のボール扱いのうまさはWEリーグが誇る特長となっている。 一方で、選手の待遇や練習環境などはWEリーグでも徐々に改善されてきてはいるが、欧米の人気クラブとの差は拡大しているように見える。こうした要因もあって、WEリーグ所属選手の海外移籍が一気に加速。女子日本代表「なでしこジャパン」も海外でプレーする選手が大半を占めるようになり、WEリーグで結果を残した選手だけでなく、将来の代表入りを目指す若手も相次いで海を渡るようになった。 男子のJリーグも同じような傾向にあるが、違いは1993年の発足から30年の歴史を持つJリーグは各クラブのアカデミー(育成組織)をはじめ、しっかりとした基盤が整備されているのに対し、創設わずか3年のWEリーグは基盤(財政、組織など)がぜい弱なこと。若手の相次ぐ海外移籍はタレントの国外流出とほぼ同義で、WEリーグの空洞化、価値低下につながりかねない。 さらには、2021~22年シーズン=1560人▽22~23年シーズン=1401人▽23~24年シーズン=1723人-の1試合平均の観客動員数の変化が示すように、リーグの人気向上のスピードはかなり遅い。リーグ側も「4クラブが平均2千人以上を集めた一方、1千人未満のクラブもあり、クラブ間の差が広がった」との認識を示しているが、ほとんどのクラブが青息吐息となりながら、なんとか試合を開催しているのが現状だ。