「サンドウィッチマンの活躍を見て『僕は座るところがない』と思った」ーーお笑い芸人が「日本一のごみ清掃員」になって見た“世界”
最初の『このゴミは収集できません』は、すぐにベストセラーになりました。僕は以前に小説とかも出していて、当時は全然売れなかったから、その時と同じく「初版分もらえればいいや」と思っていたんですけど。 ■「ゴミの専門家」としてテレビからオファーが テレビにも呼ばれるようになったのは予想外でした。どこかの番組の1コーナーに出るくらいの気持ちでいたら、「30分お渡しするので、どうやって番組を作りましょうか」みたいに、急に話が大きくなってきて。テレビは久しぶりすぎるし、これまではネタ番組しかやっていないから、バラエティ番組は感覚が分からなかったです。
『有吉弘行のダレトク!?』に出演した時は芸人っぽくしゃべって、現場で有吉さんに「1人だけ声量がデカイから」って注意されました。その時は、お金持ちのゴミについてがテーマだったんですが、「それを聞きたいんだから、ゴミのことを静かにちゃんと話して。大袈裟にやらなくていい。最後にちょっと笑いがあればそれで十分だ」って指導されて。 もうゴールの前にボールがある状態なんだから、急にオーバーヘッドキックなんかしようとしないで、ちょんと蹴って押し込めばいいんだって。
ゴミ清掃員としての出演は、本来の芸人としてのやりたい形ではないけれど、意外とみんな喜んでくれるんですよね。ただ、全然面白いことを言わないし、いつもと違うから、周りの芸人は戸惑うんです。でも、有吉さんに言われたことを守ったほうが、需要と合致して仕事につながる。いまだに難しいんですけどね。 あと、もうその頃には、本当に日本のゴミを減らしたいっていう僕自身の思いも高まってきているんで、それが広がるのは素直にうれしかったです。しばらくすると、ゴミの講演会のオファーも入ってきて、収入面は賄えるようになりました。
■日本のゴミを減らしたいって気持ちが本当にある 海外からの取材も受けましたよ。ニューヨーク・タイムズや、中国のメディアも。昨年は南ドイツ新聞で「世界が注目した日本人100人」に選ばれました。南ドイツ新聞では、ゴミのことだけじゃなくて、芸人としての部分についてもたくさん聞かれて。通訳なしではまだまだ難しいですが、今後のために英語も勉強しています。 英語だと「ゴミ清掃員」にしてもいろんな呼び方や表現があって、難しいところなんですけど。海外から日本に来る人が増えていますし、関心も高まるはずなので。
今は、清掃員の仕事は行けても週に1回くらい。もはや好きでやっている感じで、ライフワークです。日本のゴミを減らしたいって気持ちが本当にあるし、あとは運動にもなって、リフレッシュできるんですよ。金ももらえるしね。休みを作ってでも出たいです。 マネジャーの田中には、仕事が空きそうなタイミングがあったら「この日は取材を入れないで。ゴミ清掃行ってくる」とかお願いして。僕は、芸人と他の仕事の区別はそんなにしてないです。芸人の仕事も、ゴミ清掃も大切で、全部が僕の人生というか。何でも一生懸命やる、それぐらいのパワーをつけないと。1個できないヤツは2個できないからね。
滝沢 秀一 :ゴミ清掃員、お笑い芸人