「困ったときに『助けて』と言えたら」 没イチ・バツイチが集う東京・四谷のシニア食堂が目指すもの
「自分で『孤独だ』って言っている人はガードが堅くて閉鎖的。自分のことも話さないから話も広がらないし、人脈も広がらない。やっぱり、外に出る、いろんなところに顔を出すって大事だと思いますよ。私は毎週カラオケに行き、ヨガも週1ペース。旅行も1か月に1回、美術館にも毎月行っている。こんなふうに自分で決めたルーティンがあると、『今日何をしようかな』と悩むこともない。シニア食堂に初めて来ましたが、ここに来るのもルーティン化するかもしれませんね」 地元では参加者の平均年齢が70超というコミュニティーガーデン活動の代表をしているという。 ■黙っている人はほとんどいない プレオープンのこの日、食堂は午前11時半に開いたが、午後2時を過ぎても半数以上が店内に残っていた。 黙って食事をしている人はほとんどいない。 「私の母も実は没イチ…」 「伴侶を失った悲しみの癒し方?やはり時間じゃないかな」 飛び交う言葉。誰かが誰かの聞き役となり、その聞き役もまた誰かに悩みを話す。没イチもバツイチも独身者も、僧侶も、視察に訪れていた役所職員にも、笑顔があった。 ■老後の不安なくなるはず 会話をしながら食事することが、人間にとっていかに重要か。 今年10月に亡くなった料理評論家の服部幸應さんは世界初となる「食育基本法」の成立に尽力したが、生前のインタビューでは、「独居老人もなるべく外に出て、会話の中に入って食事をするほうが良いでしょう」と、「孤食」を避け、大勢で会話をしながら食事をすることの大切さを語っていた。 小谷さんは言う。 「老後の心配をする人は多い。お金を貯めて、今使うことをしない。私は老後の不安を抱えて生きるよりも、今使いたい。今やりたいことをして暮らす。人のためにお金を使い、困っている人がいたら、その人を助けたいんです。困っている人や、孤独な人がいる。たとえ一人になっても、困った時に『助けて!』って自然と言える人が増えていったら、老後の不安なんてなくなるはず。そういう人をみんなで支える場が必要だと思います」 (編集部・大崎百紀)
大崎百紀