スーパーGT最終戦予選のGT300順位認定で混乱。タイム合算方式の規則解釈で審査委員と運営に相違
鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーGT最終戦(第5戦)の予選は、GT500クラスのチャンピオンが決定したことでも話題となったが、その裏でGT300クラスの順位認定においては混乱が生じた。 【リザルト】スーパーGT第5戦鈴鹿:公式予選順位 今季からスーパーGTではQ1、Q2の合算タイムを基に順位を決める方式が採用されたが、この方式は導入初年度で手探りだったこともあり、やや複雑で分かりにくい規則となっていた。そのため、シーズン後半に向けて分かりやすさを重視して規則の一部変更が行なわれたが、後半戦は悪天候のレースが続いたことで通常と異なるイレギュラーなフォーマットで予選が実施されるケースが続いていたため、今回の鈴鹿戦がドライコンディションで通常のスケジュールで行なわれる初めての予選となっていた。 GT300のフォーマットは、まずQ1で27台が一斉に走行してタイムを計測し、Q2はQ1の上位14台を“アッパー14”、下位13台を“ロワー15”に振り分けて、2組に分かれてセッションを行なった。 その結果を受けて予選の暫定結果が出されたが、その後GT300の暫定結果が改訂されて一部車両の順位が変わった。これは規則の解釈の相違によるものだった。 というのも当初18時05分に公示された暫定結果は、アッパー組、ロワー組含めた全車のタイムを並べて、タイムの速い順に並び替えたものだった。これにより、ロワー15で最速だった96号車K-tunes RC F GT3は11番手に、逆にアッパー14の最下位だった30号車apr GR86 GTは20番手として公示された。 しかしながら、この順位認定は正しくないのではないかとの指摘が各所であがった。アッパー14の順位で1~14番手の順位を決め、ロワー15の順位で15~27番手の順位を決めるのではないかという指摘だ。シリーズを運営するプロモーターのGTアソシエイション(GTA)も審査委員に対しその旨を申し出て協議をしたが、互いの解釈が異なっていたこともあり、最終結果確定には時間を要した。結果的に暫定結果の改訂版が出されたのが約2時間後の19時53分。このリザルトでは、アッパー組最下位の30号車aprが14番手、ロワー組最上位の96号車K-tunesが15番手と、上で述べた形の順位となっていた。 そもそも、なぜ解釈の相違が生まれたのか? 状況はやや複雑だが、ここに整理する。 予選方式の一部変更が明らかになったのは夏の第4戦富士の頃。8月4日にブルテン(告示)が出され、GT300のQ1組分け廃止や、使用できるタイヤのセット数の変更など、レギュレーションの変更箇所が示された。そしてそれに加えての補足資料も内々で配布され、それら全てを踏まえた“変更版予選方式”の全容が、スーパーGT公式サイトやメディアに向けた説明などで公表された形だ。 4日に掲載されたスーパーGT公式サイトのニュースでは、前半戦に採用されていたアッパー組とロワー組の“順位入れ替え特別ルール”が廃止されることに加え、アッパー14では「Q1のタイムとQ2のタイムを合算して予選1位から14位を決定」、ロワー15では「Q1のタイムとQ2のタイムを合算して予選15位から27位を決定」すると明示されている。 では、ブルテンで告示された新レギュレーションの「順位認定」の項を見てみると、次のように示されている。 まず、「GT300は合算タイムで、Q2 Gr.1へ出走した車両の上位12台までの順位、Q2 Gr.2の5番手タイム以下を21位以下の順位とする。GT300 Q2 Gr.1の13番手以下の4台と、GT300 Q2 Gr.2の4番手以上の4台、計8台については、合算タイム順で13位から20位を決定する」という文が赤線で消されている。これが前述の「順位入れ替え特別ルール」の廃止を意味している。 それ以外は、「予選順位はQ1、Q2各セッションのタイムを合算して決定する」「予選セッションがウエット宣言下で実施された場合、GT300の順位はQ2で計測されたタイム、Q2 U14(1位~14位)、Q2 L15(15位~)で決定」と記されている。つまるところ、あくまでブルテンの規則文だけを見た場合だが、「ドライコンディションの場合はアッパー組とロワー組を合算タイム順で並び替える」という解釈もできるような条文となっていたのだ。 審査委員側の主張は、このブルテンに書かれたレギュレーション文を基に、上記のように解釈したというもの。ただ運営側としては、アッパー組はアッパー組、ロワー組はロワー組で独立して順位が決められる旨を補足資料等で関係者にも通達済み、という認識であった。こういった認識・解釈のズレが今回の一件に繋がった形だ。 この混乱は、元を辿れば複雑なタイム合算方式による予選と、その予選を分かりやすいものにするために行なったシーズン中の規則変更が引き金となった。審査委員側も補足資料含めて規則の全容を把握できていたかに疑問は残るが、とはいえ“法律”とも言えるレギュレーションの条文も完全だったとは言い切れない。いずれにせよ、こういった一件を通して、規則の整備、ブラッシュアップ、そして各所への認知を着実に進めていくしかないのではないだろうか。 なお、この件についてGTAの坂東正明代表は定例会見の中で、レギュレーションについて違った解釈で読み取れるという事象があったことから、「もう少し分かりやすいように来年のSpR(スポーティングレギュレーション)に定めようかと思っている」と述べた。
motorsport.com 日本版