メゾンブランドも注目する、オリンピアン、アイリーン・グーって誰?
アイリーン効果とは?
アイリーン・グーは中国とアメリカの橋渡し役を果たしているものの、政治的な発言には一切関与しないようにしている。「誤解されればキャリアが台無しになる」と、彼女のアメリカ人エージェントのトム・ヤップスは「エコノミスト」誌に語っている。アイリーン・グーは、非常にデリケートな外交的ゲームに巻き込まれ、中でも特にウイグル族については立場を明確にしないようにしている。 アメリカを含むいくつかの国が、中国の人権問題に対する姿勢に抗議して北京オリンピックの外交的ボイコットを実施した一方、「争いを引き起こす必要はない」と彼女は『ニューヨーク・タイムズ』に語り、その問題についての発言を拒否した。彼女はアイデンティティの問題にも巻き込まれることはない。中国代表として出場することを発表して以来、定期的に聞かれ、冬季オリンピック期間中も何度も話題になった「中国人になったのか」という質問に対して、彼女は常にこう答える:「中国にいるときは中国人で、アメリカに行くときはアメリカ人です。」現実的で巧みな言い逃れだ。中国の法律では二重国籍は禁止されている。従って論理的には、アイリーン・グーは北京大会に母の国の代表として出場することを選んだ時点で、アメリカのパスポートを放棄すべきだったが、状況は依然として不透明だ。 しかし、「アイリーン効果 」に支障はないようだ。彼女がビッグエアで優勝した後、大会中に着用したスキースーツ(中国ブランド『ANTA(アンタ)』のモデル)の売上は、eコマースプラットフォームのJD.comで20倍に増加した。カフェチェーンのラッキン・コーヒーも、自社商品の売上がアップしたことを発表した。その人気はソーシャルメディアでも証明されており、2021年にラグジュアリーブランドLVMHの傘下に入ったアメリカのブランド、ティファニーは、チャンピオンが手袋を外してティファニーのリング4つを披露した後、中国のソーシャルネットワークのウェイボー、小紅書(しょうこうしょ)、Douyin(ドウイン)でトレンドに上がった。非常に敏感で常にオンライン上で繋がっている愛国心の高い中国の消費者市場に数々の外国ブランドが対応する中、言葉の巧妙な使い方が再び成功を収めたようだ。
text: Sabrina Pons (madame.lefigaro.fr)