【Around30】突然の倒産、借金…モデルを辞め、三畳一間から社長に
相馬さんは知人の会社経営者に会いに行き、自身の考えたビジネスについてプレゼンする日々を続けた。顧客になってくれるという人はすでにたくさんいたため、成功する自信はあった。当初は全く相手にされなかったが、3カ月間ある経営者のところに通いつめ、物置部屋の一角を借りることに成功した。三畳一間。この場所が夢への第一歩だった。 店は順調だった。「デコ電」のほか、ヘアセットも手掛けるようになった。「小顔に見えるようにお願いします」。ヘアセットを頼む女性たちは、異口同音にこのオーダーをしていた。髪の面積を大きく見せることで相対的に顔を小さく見せる相馬さんのヘアセットは、好評を呼んだ。そのうち、「本当に小顔にすることができれば、もっと多くの女性が喜んでくれるかも」と考えるようになり、店をたたんでエステサロンを開業することを思いついた。 一般社団法人エステティック協会の通信教育で学び、エステティシャンの資格を取得した。業界研究にも余念がなかった。3カ月間毎日さまざまなエステサロンに客として訪れ、実際にサービスを受けながら店の雰囲気、接客、エステの技術や、料金体系などをチェックしていった。毎日施術を受けたため、毎朝起きた時に筋肉痛だったという。痛みに耐えながら、どんな店を作ればいいのか、考えを巡らせた。人の体の構造や、リラックスできる環境とは何かを勉強するために図書館に通いつめ、心理カウンセリングなど関係のありそうな本を読み漁り、整体のスクールにも通い、独自に技術を作り上げていった。 こうして2009年、相馬さんが26歳のとき、エステサロンを開業。テレビの取材も入り、3カ月先まで予定が埋まるほど電話が殺到した。一段落したころ、相馬さんは体調を崩した。気が付けば開業準備期間から1年以上も休みなく働いていた。1人では手が回らなくなる忙しさの中で初めて人を雇い、信頼できる仲間の心強さにホッとして、張りつめていた糸が緩んだのだった。