「嫁はんは宝物」多発性骨髄腫で闘病中の宮川花子と夫・宮川大助。車椅子を押して舞台へ。ネタ合わせなし、座ったままでも漫才を続けたい
◆芸人としての根本の部分を改めて噛みしめて 今までは日々の仕事として舞台に立ってきました。当たり前ながら。紛れもない仕事ですし、それでご飯を食べてきたわけです。お客さんに感謝しつつ、一つ一つのお仕事をクリアしていく。ありがたいことに、忙しく、そうやって暮らしてきました。 今は嫁はんの体調を見て、仕事を入れるかどうかを決める日々です。その時になってみないと体調が分からないので、何カ月後の何月何日に仕事を入れるということは難しい。マネージャーがうまいこと気を遣ってくれて「3日後に舞台の仕事が入りそうですけど、大丈夫でしょうか?」と近いところで打診してくれています。 花子:ホンマにイヤなんやけど、急に倒れるんです。目が覚めたら病院というパターンがあるんですよね。抗がん剤の副作用なんですけど、それがあるから先の予定が立てにくいんです。周りにも迷惑をかけてしまうし、ま、そら、イヤですね。 大助:なのでね、正直な話、漫才をやって生活ができるほどの仕事量ではないんです。生活の糧というよりも、嫁はんが目標を持てる。前を向ける。そのためのものとして漫才をしている。それが現状です。そう変わってきました。 その中でね、今、本当に思っているのが「舞台っていいなぁ」ということです。お客さんから反応をもらえたらうれしいし、自分が生きている価値も感じられる。もう50年近くやってるんですけど、芸人としての根本の部分を今改めて噛みしめてます。 花子:本当にね、今が一番です。感謝、希望、夢。強く感じています。
◆大事な女房、大事な宝もんですから 大助:あと、幸いなのが嫁はんの記憶力、口がしっかりしているということ。 僕は後期高齢者で免許の更新でも認知機能のテストも受けてますし、それも、どうにかクリアという部分もあります(笑)。ただ、嫁はんはホンマにしっかりしてます。これがダメだったら引退だと思います。甘い世界ではないですから。 現実問題、仕事のオファーは99%嫁はんありきですからね。「僕一人でも行きますよ」と吉本興業には話してるんですけど、軒並み却下ですわ(笑)。我が家の大黒柱は嫁はん。会社からの連絡も、元気な僕ではなく、全て嫁はんです。 自分の大事な女房ですから。自分の大事な宝もんですから。ウチの場合は女房が悪くなった。幸い、ダンナはまだ大丈夫。だったら、ダンナがやる。それだけのことです。 ウチの場合、嫁はんの仕事がなくなったら僕もなくなりますからね(笑)。相方としても大事ですし、何より自分の嫁はんですから。自分の大事な宝物ですから。身の回りのことをやるのは負担ではないし、大事な嫁はんやからやる。シンプルにそれだけなんです。