骨の強化には「衝撃」がカギ 骨密度の低下を遅らせる効果
中・高強度の運動や、軽いジャンプなど、骨に瞬間的に高い衝撃が加わる運動を継続的に行うと、加齢に伴う骨量の低下を少なくできることが、フィンランドで行われた研究(*1)で分かりました。 ●骨に瞬間的に高い負荷がかかる運動は骨密度を増やす? 70歳を超えると、骨盤の骨密度(骨量を骨の面積で割った値)は年に約0.5%ずつ低下し、その低下率は年齢を重ねるにつれて高くなります。一方で、高齢になっても運動を続けていれば、骨密度の低下が遅れることも示されています。 そこでフィンランド・ユヴァスキュラ大学の研究者たちは、普段あまり運動をしていない高齢者に、「レジスタンス運動(筋力トレーニング)」と「骨や関節に負荷を与えるインパクト運動」を組み合わせた運動プログラムを1年間行ってもらい、骨への影響を検討することにしました。特に注目したのは、骨の形成を促すと考えられる、骨への瞬間的負荷の高いインパクト運動(ジョギング、縄跳び、ダンス、踏み台昇降、かかとの上げ下げなど、垂直方向に衝撃が加わる運動)の実施レベルと骨密度の変化の関係です。 対象としたのは、日常生活での運動量が少ない(ガイドライン推奨レベルに満たない)70~85歳の男女299人(平均年齢74歳、58%が女性)です。これらの人たちに、12カ月間の運動プログラムに参加してもらいました。 運動プログラムは、監視付きでグループで行う運動と、自主的に行う運動からなり、主に下肢の筋力の強化と姿勢バランス能力の向上、および持久力の向上を目的とするメニューが組まれていました。 運動の評価には、腰に装着した3軸加速度計を用いました。運動開始前と6カ月後の加速度計の記録から、どの強度の運動を何分行ったかに加えて、インパクト運動の強さと回数を調べました。具体的には、1.5gを超えて2.0gまでの負荷があった場合を低インパクト運動、2.0gを超えて2.5gまでの負荷の場合を中インパクト運動、2.5g超を高インパクト運動に分類し、1日あたりのそれぞれの回数を算出しました。また、1日の全てのインパクト運動の強度と回数に基づいてOsteogenic Index(OI)スコア(*2)を算出しました。 *1 Savikangas T, et al. Bone. 2024 Jan;178:116951. *2 Osteogenic Index=運動年数×1週間の運動回数×運動インパクト係数(運動強度)で求められるスコアのこと。